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「優秀社員」の法則

暗黙の前提条件をわかっている 経営コンサルタント、セレブレイン代表取締役 高城幸司(最終回)

2017/1/8

PIXTA

13.暗黙の前提条件をわかっている

 中堅の食品商社で研修をしたときのこと。社員の中に、「僕はすごく『優秀』だ」と自負している人がいました。

 その会社が取り扱っているのは穀物で、国内に7店舗を持つ専門商社。売り上げは700億円です。これを基に「新しい事業を考えてください」と言ったところ、彼はその前提条件を無視して「メキシコに会社をつくり、そこで商品を仕入れて、北米に売りましょう」と自信たっぷりに言い出したのです。

 そもそも、その会社は国内にしか拠点がありません。それでも「まずはメキシコです」と言い張る。なぜなのかと思い、話を聞いてみると、彼自身が以前、有名な穀物商社のメキシコ支社で働いていたから、ということでした。

 「優秀」と自覚する人の中には、こういった発言を無意識にする人がいます。中には自分の「優秀さ」を示すために、あえて前提を飛び越える人もいます。会社の前提条件を越えるくらい僕は「優秀」です、というわけです。しかし、それはいただけません。

 ラーメンのチェーン店で、社長が「今の発想を捨て、新しい観点でプランを考えろ」と言ったとします。そこで、「明日からとんかつ屋をやりましょう」と提案する社員がいたとしたら? 社長からは「ちょっと待て、そもそもうちはラーメン屋だろ」と呆れられてしまいます。

 最初に「ラーメン屋の範囲で考えて」とは誰も言いませんが、会社の、とくに上層部の間では、そういった前提条件は暗黙知(経験や勘に基づく知識)となっていることが多い。そんな中で、どれほど優れたとんかつ屋のプランを提示したとしても、会社からは「優秀」だとは言われないでしょう。

 しかし、「優秀」を自負する人の中には、「うちの社長はバカだ。ラーメン前提だなんて聞いてない。『発想を変えろ』と言ったじゃないか」と言い出す人も。これでは真に「優秀」とは言えません。

 前提条件があり、そのレギュレーションが明示されることもありますが、実際には暗黙知を前提とする場合が多くあります。そこに気をつけなくてはなりません。暗黙知だった場合、「聞いてないよ」とは言わずに、「これはどういうレギュレーションで選ぶんだろう」と自分できちんと考える必要があります。

 そうしないことには、「優秀」と認められないどころか、「あいつはズレている」と言われるだけです。

14.根こそぎ違う「指導法」を提示できる

 これまでの日本の会社では、指導者のほとんどが、かつて自分が上司や先輩たちから教えてもらった指導法を踏襲していました。しかし近年、日本の企業でもこの指導法が著しい変化を遂げつつあります。すこしずつではありますが、時代の変化に合わせて、世代や性別、価値観の違う人々が一緒に仕事をしていくために、指導法も変わってきているのです。

 ありがちなのは「僕自身、若いころに体育会系で厳しく指導された。だから怒るべきときは怒るけど、ついてきてほしい」というタイプ。しかし、今の若い人たちは「俺についてこい」と言った瞬間に心が折れてしまう。伴走型でないと、ついてきてくれません。

 同様に、「僕が若いころは、先輩にそこまで教えてもらえなかった」「昔はそんな細かいことまで言わなかった」「10年前は、いちいち一人ひとりと面談はしなかった」といった言い分も、最近では通用しなくなってきました。

 指導者は、今、目の前にいる相手がどんな思考を持ち、どんな考え方をしているか、それを理解したうえで指導法を変えなくてはなりません。たとえそれが自分のやりたくないことであったり、自分のカラーに合わなくても、そこは目をつぶらないと。「自分のやりたいこと」ではなく、「世の中が求めていること」「必要とされていること」を基に考えるべきです。

「このチームはどうすれば成功するか」「どうしたら勝てるのか」ということを第一に、部下たちが最大限にやる気を出して成果をあげられる方法を考えるのです。自分の評価をあげることだけを考えているようでは、優秀な指導者とは言えません。

 箱根駅伝で有名になった青山学院大学の原晋(はら・すすむ)監督は、元サラリーマンで駅伝経験はゼロという異色の経歴の持ち主です。かつて「伝説の営業マン」と呼ばれた監督は、「根性論だけでは、今の学生はついてこない」と古い考えを捨て、「人として自立させる」ことを指導理念に掲げました。そして「目標管理シート」を取り入れて目標の設定や管理を徹底させ、選手の自発的な成長を促し、見事チームを3連覇に導いたのです。

 このように、新しい指導法を取り入れ、そのうえできちんと結果を出す人こそが「優秀」な指導者と言えます。一方で、「前任の有名監督の指導法を引き継いで、今年も優勝しました」という監督がいたとしても、それはただ引き継いだだけで、彼自身が「優秀」とは言えません。

 人は自分が学んできたバックグラウンドを重要視するあまり、他人に教えるときもそこから入りがちです。しかし、それはただの自己満足に過ぎません。過去に自分がやってきたこと、教えてもらってきたことを、まずは1回捨ててみる。改善するのではなく、ゼロベースで考えるのです。

「優秀」と言われる人には、「目からウロコ」とも言える発想力がある。「すこし変える」のではなく、「根こそぎ変える」くらいの思い切りは必要でしょう。自分がこれまで学んできた仕事の仕方とは対極とも言えるような方法で、成果が出ることもあるでしょう。もちろん、レギュレーションやルールは守ったうえで、過去に縛られない斬新な指導法を提示し、それで成果をあげることが重要です。

 とくに今、指導法が著しく変わりつつあるこのタイミングで、社内において新しい方法で成果をあげると、間違いなく「優秀」と認定されるでしょう。

◇   ◇   ◇

高城幸司(たかぎ・こうじ)
経営コンサルタント。セレブレイン代表取締役。1964年東京生まれ。86年同志社大学卒業後、リクルートに入社。6年連続トップセールスに輝き、伝説の営業マンとして社内外から注目される。起業・独立の情報誌「アントレ」を創刊して編集長を務めたのち独立。現在は人事コンサルティング会社セレブレインをはじめ、2つの会社を経営する。著書に『仕事の9割は世間話』『無茶振りの技術』(日本経済新聞出版社)、『社内政治の教科書』(ダイヤモンド社)など多数。

[2015年11月11日掲載の日経Bizアカデミー記事を再構成]

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