アジの干物にも背開き、腹開き よく観察してみると…
干物(3)
同僚が何の用事か知らないが、長野県駒ケ根市に行ってきた。駒ケ根といえばソースかつ丼。「信州駒ケ根ソースかつ丼会」というのがあって、商工会議所が発行しているマップには30店以上のの飲食施設が紹介されている。
地元のメーカーが専用ソースを売っている。ラベル印刷されているブタさんが地元の統一マークらしい。「K」は駒ケ根のKとかつ丼のKをかけたものであろうか。
で、瓶の裏の成分表示を読んでちょっとびっくりした。品名は「中濃ソース」なのだが、主成分は「濃口醤油」なのである。それに野菜や果実、酢や各種エキスを加えてある。加えてはあるが、主成分が醤油ならソースではなく醤油ではないかと思ったのだった。
それはともかく「おいしい召し上がり方」を読むと「少し温めたソースに揚げたてのかつを少しくぐらせ食べやすく切って、千切りキャベツをのせたご飯の上に盛りつけ、お召し上がり下さい」と書いてある。これが駒ケ根の標準的なかつ丼らしい。
と思ったらソースの箱に入っていた印刷物には「ソースかつ丼の作り方」として「ご飯の上に千切りキャベツをのせる。その上に切ったカツをのせる。そこに適量のソースをかける」となっていた。
カツをソースにくぐらせるのがいいのか、ソースをかけるのがいいのかはっきりしてくれなんて、やぼなことは言わない。どっちでもいいのよね。
もうひとつのお土産は「ソースかつ丼パイ」。
味? 知りません。
干物に関する皆さんからのメールを拝見していて、意表を突かれたことがあった。
ウナギだけじゃなかったのね、この問題。
ところで、ポピュラーな「アジの開き」ですが、伊豆なんかですと頭ごと腹開きにしますよね。
こちらでは、頭を残して背開きにします。これはカマスなど1匹丸ごと開きにする干物には共通した方法です。
ホッケの開きなど、北海道は頭から開いてますね。東日本はこの方法でしょうけど、関西や中京地区、九州などはどっちなのでしょうか(高知の恒石さん)
干物に背開き、腹開きの違いがあることには気がつかなかった。果たして地域差はあるのだろうか。重要な視点が浮上してきた。皆さんも注意して地元の干物を観察し、ご報告願いたい。
各地の干物を見てみよう。
新潟には「イカの丸干し」があります。最近は薄塩になりましたが、昔は焼くと塩が吹き出すようなものでした。内臓が入ったままのするめイカを若干水分が残るように乾してあります。
軽くあぶり、筒切りにするとねっとりとした内臓がこぼれてきて食欲をそそります。しかし、健康には文句なく悪そうなおいしさです。
「鮭の塩引き」も干物には違いないような気がします(匿名希望のむらまつさん)
にゃがにゃがにゃーんは当サイトにふさわしい鳴り物である……ような気もする。ふにゃにゃにゃーんでもよろしい。へろへろぴーんは?って遊んでる場合ではない。
イカの丸干し。そう、あの真っ黒いワタがうまいんである。あれひとなめで酒一合。でも、ときどき硬いのあるしなあ。
デスク賛同 そうそう、僕はいかの沖漬けの凍ったやつが好き。そのまま輪切りにして、ワタをしゃりしゃりと食べると何とも言えないですよね。
ウツボは確か不知火海辺りでは刺し身で食べるのではなかっただろうか。かつて食べたことがある。透き通った白身であった。あの一切れで酒一合。
これは豪華。
伊勢エビは殻をむいて干してあるのだろうか。殻ごとだと干しているうちに中身が腐ってしまいそうである。とすると、相当手間がかかっている。いくら?
エビのあとはタコ。
頭にS字フックをぶち刺されて、物干しざおに並んでひらひらしている様子が何とも素敵。おばあちゃんが出てくると、細い足を味見させてくれたり、おまけしてくれたりします。指がたこの香りに包まれるんですけど、でも、車の中でかじるあじだこがこれまたいいのです(新潟市 矢作ちかぶーさん)
はっきり言ってうまそう。おばあちゃんが出てくるところが目に浮かぶ。いいなあ、この情景。硬くないところも好き。
(特任編集委員 野瀬泰申)
[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]
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