本場の昆布締め、東京で 白身に限らずエビイカ、赤身
「天然のいけす」富山湾の味(1)
海産物が豊かな富山湾は「天然のいけす」と呼ばれる。立山連峰から流れ込む水は栄養豊富で、深度があり、海底の地形も険しいことから、魚にとっては最高の住み心地。しかも湾内なので、捕った魚介は鮮度抜群のまま食卓に上る。
紅ズワイガニ、ボタンエビ、バイガイ、ゲンゲ…。あげるときりがない。
中でも人気が高いのがシロエビ。生は透明で美しく、独特の甘みがある。シロエビの空揚げは地元の人気メニューだ。
春が旬のホタルイカも名物。干せばいつでも食べられる。わたが濃厚に味わえることから、酒のつまみとして人気が高い。
そんな富山の地魚、鮮度抜群のまま食べるのはもちろん美味だが、地元では昆布締めにして食べることも多い。江戸時代、北陸は北海道と大阪とを結ぶ北前船の基地として栄えた。北海道の昆布が、食べきれないほど豊富にとれる「天然のいけす」の魚を日持ちさせるための加工に使われた。
関西では、タイやヒラメなどの白身魚を昆布締めにするのが一般的だが、富山では赤身やエビ、イカも昆布締めになる。
富山らしいのは、地元で「サス」と呼ばれるカジキマグロの昆布締め。
すこし醤油をつけて食べるとおいしいが、昆布のうまみがしっかり身に染み込んでいるため、何もつけなくてもおいしい。昆布をはがさず一緒に食べれば、日本酒が進む。
名産のホタルイカやシロイカも昆布締めになる。淡白なシロイカはおぼろ昆布で締めると味わい深い。
魚介だけでなく、山菜まで昆布締めにしてしまうのだから、富山の人の昆布締め好きは相当なものだ。
富山県では今年6月、東京・日本橋に新しいアンテナショップを開いた。昆布締めも品ぞろえ豊富。キトキト(方言で「新鮮な」)の刺身はできれば現地で味わいたいが、そもそも昆布締めは保存食。東京に居ながらにして富山そのままに味わえるはずだ。
(渡辺智哉)
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