ビール、チューハイ、シロップかけ放題 下町のかき氷
かき氷ほか冷たいモン(4)
ええっと、久留米に行ってきた。9月3、4日に開かれた第2回焼き鳥日本一フェスタ。凄かった。もの凄かった。昨年は2日で2万人だったのが今年は3万人。しかもこれは入場した人の数であって、「ただ今40分待ち」といった張り紙を見てあきらめ、そこいらの焼き鳥の店に駆け込んだ人数知れず。
初日の模様が日本経済新聞を除く全新聞、テレ東系列のテレ九を除く全テレビ・ラジオで大々的に報道されたせいか、2日目は午後3時スタートのところ午後1時過ぎにすでに100人ほどが開場を待った。私は本部席にいたのだが、そこに午後2時前に中年の一団がやってきた。
「大分の中津からきたんですが、テレビでは3時スタートと言っていなかったのでお昼も食べていません。3時までは待てません。何とか食べさせてもらえませんか」
と書くと普通の言い方のようだが、実際は青筋系の口調であった。切羽詰まっていた。私には何の権限もなかったのだが、実行委員の人に「こんな人がきてるけど」と伝えたところ、急きょ「始められるところから始めてください」とのアナウンスが流れ、予定より1時間繰り上げて試合開始となった。
各店とも1日当たり2000本とか3500本とかの串を用意していた。それがどんどんなくなっていく。あれよあれよであった。
夕方には雨も降ってきたというのに、傘をさして飲み食いに精を出す人々が続出し、ついに全店全品売り切れとなったのだった。
主催者によると入場者の半分は市外及び県外からで、周辺の飲食店も繁盛、屋台も繁盛、ついでにタクシーも繁盛で経済波及効果は絶大であった。
当サイトの読者、栗猫さんも大阪からきてくれ、ついに2泊してしまったのである。久留米無理やり1泊観光地化計画の犠牲者である。ひょっとして久留米のホテルの稼働率も上がったのではないか。
デスクはデスクで博多で飯を食い、久留米にきて明るいうちからギョウザだのビールだの焼き鳥だのを腹に詰め込み 、夜は夜で栗猫さんと共に久留米焼き鳥学会広報部長、豆津橋渡さんの案内でギョウザだのラーメンだの馬レバ刺しだのをまたまたたらふく食ったのである。さらにその翌日、京都に直行し各種冷たいモンの取材を敢行した。
今回は特別にデスク奇行を末尾に掲載する。よって「乱入」は禁止。後で思う存分、といっても適当な長さでリポートしてね。生粋の東京周辺人のデスクから久留米はどう見えたのだろうか。
本題。「すい」「せんじ」「みぞれ」以外の呼び方はないだろうかとお尋ねしたところ、こんなメールをいただいた。
大阪へ移ったころはすでに西日本は「みぞれ」ということを知っていたので、こちらが問いただすことはないのですが、ついつい「すい」といってしまうことは多々あります。ちなみに、秋田や横浜の方には「すい」では通じませんでした。
また「白雪」という言い方もあるみたいですが、私にとっては「みぞれ」と同じくカップかき氷の商品名というイメージです。もしかしたら東北で「白雪」という言葉を使う人が多いかもしれません……最後に、ちょっとした疑問ですが「かき氷を飲む」っていう言い方をしますか? ネット検索をしていたら、何人かがこういう表記をしていて気になりました(御木さん)
「甘露」「白雪」が登場した。
かき氷は食べるものか飲むものか。最初はスプーンで食べていたのに、最後の方は解けて液状になったので皿に口をつけて飲んだことはある。だが、最初から飲んだことはない。飲めませんよ、あれは。
1960年生まれのあっしも、小~中学校時代には夏にかき氷屋さんのお世話になりましたが、当時のラインナップはイチゴ・レモン・メロン・甘露の4種類が基本シロップ(お金持ちは+あずき、またはミルク)。ブルーハワイなんぞというものが出てきたのは、かなり後年でありました。
また「かき氷のシェルクル固め」。うちの田舎は木製でありましたゾ。15センチぐらいの"カマボコ板のでかいの"を想像してください。そこに、ゆきだるま(8の字のまん中の太いやつ)がくり抜いてある。その穴にシャーコシャーコとかき氷の山を作り、くり抜かれてしまった凸型ゆきだるまで「ギュ!」と押す。もちろん「ギュ!」の前に割り箸を添えて、田舎のアイスキャンデーの出来上がり一丁。ただし、かき氷をやってる駄菓子屋が10軒あって、これは1~2軒という少数派でありました(ぎずも@栃木市生まれさん)
静岡に続いて栃木も「甘露」。甘露頑張る。
「かき氷のシェルクル固め」も健闘している。いや、健闘していたと過去形か。
また、棒状に固めたカキ氷は昭和30年代の大阪では、祭りの屋台でよく見かけました(榎本さん)
「氷まんじゅう」という表現を目にして、私の記憶の底の方がピクピク反応している。子供のころ使っていたか聞いていたのか。思い出せないが初耳ではないような気がする。
突如、関西から「ババヘラ」発見情報。
残念ながら店じまいの最中で、アイスクリーム入れや旗を片付けていたので、しっかりとは確認できませんでしたが、老女がパイプいすに腰掛けてシャーベットかアイスクリームを盛り付けて渡す。そのスタイルは確認できました。「ババヘラ」ですかと聞きたかったけど、殴り倒されそうなのでやめました。
場所は淀川沿い、鳥飼大橋付近です。摂津市か寝屋川市かな? 関西にもあったんですね、「ババヘラ」が(尼崎市・歌もうたうランナーさん)
これは重要な情報である。ババヘラ似の販売形態は過去、高知(1×1=1)、長崎の島原半島、沖縄各地のものが判明しているが、関西でも規模不明ながら存在する可能性を示している。さらなる情報を待ちたい。送ってね。
前回、名古屋のデパガさんからご質問があった「日本海に沈む夕陽ソフトクリーム」とは何か。
ネーミングは、そのままストレートに「日本海に沈む夕陽ソフトクリーム」に。でもこの夕陽がすごいんです。日本海に沈む瞬間「ジュッ!」と音がするらしいです。
(八戸市 アンぱんちさん)
夕陽が海に沈む「ジュッ」という音を聞きたいなあ。
柴又帝釈天にはおじさんにも子供にも受けている店があるらしい。
私が「氷あずきソフトクリームのせ(+50円でソフトクリームかアイスクリームをトッピングできる)」を食べてる横では、ビールやチューハイを飲んでたりする……お子さん向けにシロップかけただけのものもあるのですが、「シロップかけ放題」という恐ろしいサービスをやっています。まぁ子供だましなんだと思いますが、このあたりに下町の良さを感じてたりします。
この店に「焼酎のそば湯割り」というメニューがありますが、たびたび記事に出てくるのは本当に「そばつゆ割り」なんでしょうか?「かなん亭」に限らず「そば湯割り」は何回か聞いたことがありますが、「そばつゆ割り」というのは、人格を疑われることもあったのではないでしょうか?(江戸川三連豚@千葉県我孫子市:千葉都民さん)
シロップかけ放題である。太っ腹である。柴又帝釈天の参道に並ぶ店は昭和40年代辺りのにおいがする。わざとそうしているのではなく、毎日のにぎわいに追われているうちに時代についていくのを忘れてしまったという印象。いまも「コヒー」などというメニューが健在なのがうれしい。あの辺をうろうろし、矢切の渡しに揺られて対岸に行くのも一興。江戸川の向こうはなにしろ「野菊の墓」の舞台である。
で「焼酎のそばつゆ割り」と「焼酎のそば湯割り」は全くの別物である。前者はカツオ、昆布の香りも豊かな茶色のそばつゆで割ったものであった。後者は白濁したそば湯で割ったものである。また前者は神田駅構内の立ち食いそばの店のメニューであり、八戸せんべい汁研究所の皆さんが見えた折にご案内したことがあるのだが、現在はその店自体がなくなり、現在はFーストキッチンになってしまった。あんなに繁盛していたのに、残念なことである。
世の中には、こんなかき氷の食べ方もある。浜松からのメール。
私は試す勇気がないので、どなたか是非お試しを。ベースは白雪で!(今年もクーラーなしで乗り切ったMartinさん)
エッグノック、ミルクセーキに似てるだにぃ~。似てるけど似てないような気もするだにぃ~。浜松も「白雪」と言うとるらぁ~。
包丁で切ったらあかんやん! 水なすは包丁で、それもこんなに薄く切ったらあかんのです。へただけ落として、あとは縦に手で裂いて召し上がってください。
なんで? よう知りません。けど、お舅さん・お姑さん・主人からそう習いました(はづきさん)
ふっふっふ。いいところに気がついたね。うちのカミさんは東京生まれの東京育ちなので「ナスの漬物」はみんな包丁で切るのだよ。豊下さんからのメールにも「手で裂け」と書いてあったが、私がそれを言う前に切ってあったのだよ。豊下さん、ごめんなさい。
「全日本とんかつ連盟」についてはそのまま検索すると連盟のHPがヒットするが、質問者の荷宮さんは2ちゃんねるに関する著書もある方。こんな初歩的な情報じゃ、ダメなんでしょうねぇ。
VOTEは、シロップは上? 下? に関するメールが少なかったので、このテーマでのVOTEは断念。その代わり途中から浮かんできた「透明の蜜をなんて呼ぶ」でいく。「すい」地帯はどこか。
結論からいうと、西日本を中心に列島を「みぞれ」が覆っている。だが、一色ではない。東京のほかに宮城、秋田で「すい」が頑張り、愛三岐軍団は「せんじ」文化圏を形成している。さらに静岡、栃木、茨城は「甘露」が健闘、「白雪」も東日本に点在しているのである。自由回答の中には「みつ」「氷すい」「氷みず」もちらほら。
そして次回のテーマは秋祭りのシーズンなので、懸案の「縁日系」。つまりお祭りの露店で売っている食べ物である。こんな縁日の食べ物はどこにでもあるの? でもいいいし、うちの方じゃあこんなもんあるけど、でもいい。
私は「綿菓子」派。カミさん及び子供たちは「綿あめ」派。「べっこう飴」は全国共通語だろうか。東京には大阪にない「大阪焼き」があり、大阪では東京にない「東京カステラ」を見た。いろんな話題が転がっていそうである。
ではデスクの出番。頑張ってね。
ここでデスク乱入、というか一部占拠 さて、お待たせしました。えっ、待ってない? ここからは、僕の久留米・京都暴飲暴食の旅リポートをお届けします。
実は会場に到着するまでにひと騒動。博多で食い過ぎた僕は、腹をこなそうとスポーツクラブを探すも天神周辺で迷子に。これで、まず久留米到着が遅れる。しかも、久留米駅前の某ホテルのとっても親切な道案内で、久留米駅周辺を存分に探索、結局、会場に着いたのは4時を過ぎてしまったのです。
合計で1時間以上の徒歩で、おなかはすっかり戦闘モードを取り戻していたのですが、そんな僕を待っていたのが前述の「40分待ち」の大行列。俺に焼き鳥を食わせろぉー、と大槻ケンヂのように額に青筋たてての会場入りとなりました。
そんな僕の戦闘モードを察したのか、野瀬さんの引率で、高校の頃から通っているというラーメン屋へ。焼き鳥に未練を感じつつも、ゆで卵をつべたいビールで流し込めば、あとはただの酔っぱらい。この日2皿目のギョウザに、3玉目のラーメンを何杯飲んだか忘れたビールで食せば、大槻ケンヂから高木ブーにモードチェンジです。
再び会場に戻り、本部席の特権で、あちらこちらから焼き物とビール・焼酎の差し入れをいただく。カメラを手に会場を巡ると、やはり鳥以外の焼き物が多いですね。特に豚バラ! 東京だと「やきとん」となるところですが、こちらではこれらがすべて「やきとり」らしい。豆津橋さんのお話によると、久留米のやきとりは決して漢字で「焼き鳥」と書いてはいけないそうな。たしかに豚もあれば、馬、魚も多い。やき「とり」≠焼き「鳥」ですね。
会場を出て、豆津橋さんご推奨の焼き鳥屋では馬料理をいただきました。まずは、レバ刺し。生臭さがなく、レバー嫌いの人にもこれなら食べられそうです。さらに馬のユッケ風。生卵なしで、馬の脂肪分の少なさもあり、とてもあっさりいただきました。そしてダルム。脂の多い大腸ですが、掃除の具合で脂っこくもカリカリにも変幻自在だそうです。
そしてこの日のメインディッシュとなったのが、この日3皿目のギョウザ。3皿目ながら「きょうイチ」。少し厚めの皮をかりかりに焼いたミニサイズのギョウザが僕の満腹中枢を破壊しました。焼酎をいったんビールに戻し「ギョウザにはビール」の正当派スタイルで、久留米の名品におかわりして挑みました(4皿目!)。そして最後は屋台の「馬ホルモン」でシメ。ふぅ、満腹中枢壊れてなお満腹!
栗猫さん、こんな暴飲暴食に最後までおつきあいいただき、お疲れ様でした。とはいえ、女性にしては、良く食ってましたよね?
翌日はいけずな京女さんのアテンドで京都の冷たいモンを堪能。特に錦市場はこのサイトのネタの宝庫でした。まずは七味ソフトに遭遇。舌に乗せ、口に含んでしばらくは甘いバニラの香りが口腔を占めるのですが、その後、激辛カレーが後から来るように、口の中には辛みが広がります。何とも不思議な感覚でした。
京都のテーマは「冷たいモン」ですが、そこは酒飲み。目を引いたのが、大吟醸のコップ売りです。冷え冷えでアルミのボディーに結露したタンクが僕を呼んでいました。蛇口をひねってコップになみなみと注いでくれます。左手には大吟醸、首から巨大カメラ、右手にコンパクトカメラの出で立ちで、錦市場を徘徊しました。
そして京都のメインディッシュは、もちろん鴨川端での宇治金時です。表通りからちょっと入った静かな甘味屋さんが舞台です。しずしずと運ばれてきた宇治金時には白玉が添えられています。そして僕が頼んだ宇治金時、いけずな京女さんが頼んだ宇治氷(ともにアイスクリームのせ)は一見違いがありません。あんこは氷の下に隠されているのです。さすが京都、なんと奥ゆかしいことでしょう。
もちろん抹茶シロップなどというものは使いません。きちんと抹茶をたてて作っているとのこと、しっかり抹茶の香りがします。抹茶特有の舌触りも本物です。そしてしばらく掘削を続けるうちについに鉱脈、いやあんこに到達しました。けっこう大量のあんこです。本来甘いものが得意でない酒飲みですが、柔らかな甘みについつい完食してしまいました。
ということで、僕は2日間でいったいどれだけ飲み食いしたのでしょう? 怖くて体重計に乗れません。
それにしても豆津橋さん、栗猫さん、いけずな京女さん、本当にありがとうございました。やはり読者あっての「食べ物 新日本奇行」です。そして、全国にちらばる多くの読者の皆さん。これからもおいしいとこがあったら僕を連れてってね。では、今週はこれにて。
はい、よくできました。大槻ケンヂが高木ブーに変身するところがよかったね。私より面白いかも。
(特別編集委員 野瀬泰申)
[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]
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