変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック

2010年3月、ハウステンボス(長崎県佐世保市)の社長に就く。

1992年の開業以来、18年間赤字続きだったハウステンボスを立て直すにはまず財務内容の改善が必要でした。ハウステンボスは100%減資、そのうえでエイチ・アイ・エス(HIS)が20億円、九州電力や西部ガスなど地元企業5社が計10億円出資しました。金融機関には債権を8割カットしてもらい、増資で得たお金で残りを返済しました。借金はゼロになり、黒字を続ければ倒産する心配はなくなりました。

ところが新生ハウステンボスの陣頭指揮を執る社長が決まりません。HIS社内でも希望者はおらず、外部から人材を呼ぶには時間がかかりすぎました。周囲の猛反対を押し切って経営支援を決めた私が、ハウステンボスの社長に就くしかありませんでした。それまでのハウステンボスが「石ころ」だったとしても、磨けばダイヤモンドになるかもしれない――。ハウステンボスの経営再建は、航空業界への新規参入など、これまで挑んだ数々の難題に匹敵します。経営者の腕が鳴りました。

中途半端な気持ちでは臨めないと考え、ハウステンボスに腰を据えて陣頭指揮を執ることにしました。1カ月のうち、3分の2近くの時間をハウステンボスに費やしています。園内にあるホテルの一室に住み込んだ単身赴任生活で、住民票も佐世保市に移しました。

従業員の士気は低下していた。

オランダの街並みを再現したハウステンボスは開業以来、赤字が続いていた

オランダの街並みを再現したハウステンボスは開業以来、赤字が続いていた

ハウステンボスの社長は私で10人目でした。「また新しい社長が来たけど、何も変わらない」という沈滞ムードが現場に漂っていました。赤字続きだったので、社員には10年近くボーナスが支給されていませんでした。従業員の表情は暗く、元気がありません。「勝ち戦」を知らない従業員の気持ちを明るくしなければなりませんでした。

「テーマパークは楽しさや感動を提供するすばらしい仕事です。まずはこの仕事の意義を認識して誇りを持ってください」。社長就任の直後、全従業員を集めてこう呼びかけました。さらに「2年後には黒字にし、ボーナスが出る収益体質への転換」を目指すことにしました。

入場者数が減り続けていた営業のてこ入れに乗り出しました。そこで3カ月間の限定で、平日の午後3時から午後5時半までの入場料を無料にしました。とにかくお客さんを呼び込んで、園内全体の雰囲気を明るくしようともくろんだのですが、入場者はほとんど増えませんでした。

これまで挑戦してきた旅行会社も航空会社も価格を安くすれば、お客さんは喜んでくれました。ところがテーマパークは入場料をタダにしても、喜んでくれるわけではありません。経営者人生の成功体験が通用しないことに驚きました。「石ころは石ころのままかもしれない」。ハウステンボス再建の前途は多難でした。

[日経産業新聞2016年1月21日付]

<< (13)火中の栗 あえて拾う  (15)イベント 暗い園内に光 >>

新着記事

Follow Us
日経転職版日経ビジネススクールOFFICE PASSexcedo日経TEST

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック