2003(平成15)年、久留米市は「やきとり日本一」を宣言した。
全国主要都市を対象に、人口1万人あたりの「やきとり店」の数を割り出したところ「日本3大やきとりのまち」といわれていた愛媛・今治、北海道・室蘭、埼玉・東松山を上回ったのだという。

単に数が多いだけでない。久留米のやきとりには他のまちにはない圧倒的な個性がある。

まず気が付くのは、やきとりといいながら鳥肉以外のメニューが非常に多いこと。味付けは塩が基本。

博多同様、メインは豚ばら。ネギも長ネギではなくタマネギだ。
アスパラやトマトなどの肉巻きも豊富。馬もある。久留米では、野菜でも魚でも、串に刺して焼けば、それがやきとりだ。

呼び名もまたユニーク。久留米やきとりの人気メニュー・ダルムは、豚などの小腸を脂をそぎ取って塩焼きにしたもの。
昭和初期に専門学校が開かれて以来、久留米は医学のまちとしても発展してきた。ダルムとはドイツ語で腸のこと。なので、はつ(心臓)はヘルツと呼ばれる。

調理法も個性的。仙台名物として歯ごたえのイメージが強いタンも、ボイルしてほろほろにしてから串焼きにする。

逆に歯ごたえを楽しむのはセンポコだ。牛の大動脈。血管というよりチューブを思わせる厚さで、コリコリと音がするほど。

久留米では、豚足もやきとりメニュー。タン同様、ボイルしてから炭火で炙る。かりっと香ばしい皮にかじりつくと、あとは崩れるように柔らかい食感を楽しめる。

平成の大合併で人口が増えた現在でも「やきとり日本一」を旗印に、やきとり店が一堂に集まるイベントが毎年秋に開催される。当日の会場周辺は、やきとりの煙で目がかすむほど。
焼く方も食べる方も筋金入りだ。
(渡辺智哉)