ベッキーも舛添氏も… みんな他人のギャップが大好き

今年前半のスキャンダルから浮かび上がること……

6月も半ばを過ぎ、この半年に報じられたスキャンダルから、「あること」が浮かび上がってくる。順不同、思いつくまま挙げてみる。

*あの清純派? のベッキーが「ゲスの極み」と不倫!?
*甲子園のヒーローからプロ野球でも大活躍した清原和博元選手が、覚せい剤!?
*育児休暇促進を政策に掲げてさっそうと登場した宮崎謙介議員が、妻の育休中に京都不倫!?
*金メダル候補“バドミントン界の貴公子”桃田賢斗選手が、闇カジノ賭博とキャバクラ遊びにのめり込み!?
*ベストセラー「五体不満足」で我々を感動させた乙武洋匡さんが、5人の女性と不倫!?
*“家族愛”を歌い上げるファンキー加藤さんが、家族を裏切る!?

ついでに……

*ファーストクラスでスイートルームを「豪快に」エンジョイした都知事が、回転ずし代金や家族のパジャマ購入費をちょろまかす「せこい人」だった!?

この半年間で注目度が高かったものをテキトーに挙げてみたが、これらには共通するポイントがある。

全ての項目は「Aだと思っていたら、なんとBだった、構文」。すなわち「A」という予測と「B」という事実の間に「意外なギャップ」が存在したせいで、人々の関心はいやがうえにも高まった。その結果、行為の主体は激しく非難され、嫌われた。

「いいイメージを持たれがちな人」は要注意

A:先にあらかじめ与えられていた+(プラス)=ポジティブ情報が、B:後から知らされた-(マイナス)=ネガティブ情報に転じた「落差」は(最も)嫌われるという説がある。
「人をひきつける心」奥田秀宇、サイエンス社

こんなことはわざわざ心理学を持ち出さなくても我々は十分理解できる。「いい人だ、好ましいイメージだ」と思う人が、「イメージと全く逆の好ましくない行動」を行うと、イメージがもともと良くない人以上に「ひどい失望」を与えからだ。

「え? マジに、そんなことやるわけ? ありえねー!」

「意外なギャップ」に、嫌悪を募らせる声があちこちから聞こえてくる。著名人に限らず「いいイメージを持たれがちな人」は要注意だ。

「見た目も、仕事もそこそこ」の人の失態なら、「ま、仕方ないか」で済まされる。ところが「イケメンで、人当たりもよく仕事もバリバリ」なんて人は、わずかなつまずきが周囲に「大きな失望」を与える可能性がある。「勝手な期待」を背負いこまされると人はしんどくなる。

(写真:PIXTA)

対人関係に巧みな人は、長い付き合いになりそうな人との初対面では「あえて第一印象をあまりよくしない」と聞いたことがある。第一印象の良さが2回目の対面のハードルを上げ、3回目以降はよりよい印象形成のため、ひたすらきゅうきゅうとして次第に疲弊するからだそうだ。

「よく思われたい」と思って気張ると長い付き合いはできない。

意外にも……で、高感度アップの岸博幸さん

ギャップは何も「プラスがマイナスに転じるネガティブ場面」に限らない。それとは逆に「マイナスがプラスに転じるポジティブギャップ」は好感度アップに役にたつ。

先日たまたま目にしたテレビ番組「人気者から学べ そこホメ!?」(フジテレビ火曜午後7時~)では、「好ましいギャップ」を見事に活用していた。そこに元経産相の官僚で、今はコメンテーターとしてテレビで活躍する慶応大学教授の岸博幸さんが登場していた。

官僚は「いかにも官僚的」とか「杓子(しゃくし)定規、融通が利かない、面白みがない」という具合に「マイナスイメージ」を持たれがちだ(少なくともテレビのバラエティー番組では……)。

一橋から霞が関、米コロンビア大学でMBAの経歴。小泉政権時、竹中平蔵大臣の補佐官としてニュースでしばしば目にした、あの、いかにも敏腕なインテリというイメージは、十分尊敬に値するが、我々ミーハーからは遠いはるか向こうの存在。少なくとも親しみを感じる存在ではなかった。

近年では、テレビ露出が増え「メタルロックフリーク、無類の格闘技ファン、登山はプロ級」などプロフィルの“意外なギャップ”が紹介され、お茶の間の好感度はアップしてきていた。「思ったのとは違って、意外にも……」と思った視聴者も多いだろう。

「マイナスがプラスに転じるポジティブなギャップ効果」は既に表れていた。

番組ではその「ポジティブギャップ効果」をさらに高めるべく(?)、岸さんの「実はキャバクラ・合コン大好きの爆弾証拠写真」を公開した!

「メタルや格闘技や登山以上に、合コンで若い女性を前にとびっきりのデレデレ顔」というギャップは、「官僚臭さ」という「ネガティブイメージ」を払拭するに十分なインパクトを持った(良い悪いは別にして、ミーハーな私はより親近感を抱いた)。

番組のホームページには「(当番組は)本人も気づかなかった<そこホメポイント>をどんどん掘り下げる」とある。「そこホメポイントを掘り下げる」とは、ギャップを活用し「マイナスをプラスに転じさせる行為」そのもののようだ。

松下奈緒さんは「完璧女子」?

この番組には以前、女優の松下奈緒さんも登場しているらしい。

彼女には「完璧女子」という「一見プラスで実は人を遠ざけるマイナス要素を帯びたキャラ」がつきまとっていた。「優等生キャラ」と同じ匂いのする「マイナスな言葉」だとも言える(プラスだと考える方がまともかもしれないが、親しみという点ではマイナス)。

どうやら彼女は「完璧女子」を期待されていることを、「負担で居心地が悪い」と感じていたのかもしれない。

番組が「本人も気づかない<そこホメポイント>」を掘り下げた結果、近寄りがたい完璧女子が「実際は気さくなおっちょこちょい」という“意外な事実”を発見したようなのだ。

「完璧女子イメージの松下さんが、実は“おっちょこちょいなキャラ”で誰よりもスタッフを和ませていた!」

(写真:PIXTA)

こういうギャップは、一般的に好感度を上げる。政治家で言えば自民党の石破茂地方創生担当大臣がギャップで得をしている。「ふてぶてしそうな強面(こわもて)」なのに、実は「鉄道オタク」「プラモデル好き」「キャンデイーズ・ラブ」なのが「なかなかチャーミング」という声がある。

長時間取材した記者も言っていた。

「話のついでに鉄道プラモデルの話を振ったら、話が止まらなくなり、大事な取材時間がなくなってしまうのではないかと心配するほどだった。あの方は本物だ……」

変なところに感心していた。

「好ましいことにつけ、好ましくないことにつけ、人は他人のギャップが大好きだ」ということだけは間違いなさそうだ。

[2016年6月16日公開のBizCOLLEGEの記事を再構成]

梶原しげるの「しゃべりテク」」は木曜更新です。次回は6月30日の予定です。
梶原 しげる(かじわら・しげる)
1950年生まれ。早稲田大学卒業後、文化放送のアナウンサーになる。92年からフリーになり、司会業を中心に活躍中。東京成徳大学客員教授(心理学修士)。「日本語検定」審議委員を担当。
著書に『すべらない敬語』『そんな言い方ないだろう』『会話のきっかけ』 『ひっかかる日本語』(新潮新書)『敬語力の基本』『最初の30秒で相手の心をつかむ雑談術』(日本実業出版社)『毒舌の会話術』 (幻冬舎新書) 『プロのしゃべりのテクニック(DVDつき)』 (日経BPムック) 『あぁ、残念な話し方』(青春新書インテリジェンス) 『新米上司の言葉かけ』(技術評論社)ほか多数。最新刊に『まずは「ドジな話」をしなさい』(サンマーク出版)がある。

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