目を合わせて話すのが苦手だ、という方は多いものです。実は、私もかつてはとても苦手でした。33歳で病身の夫の後を継ぐかたちで経営者になった私は、吃音(きつおん)で上がり症。初対面では、簡単なあいさつをするにもビクビク、オドオド。胸が張り裂けそうでした。
取引先へあいさつに伺ったとき、「臼井社長は目を見て話さないんですね、私がこわもてだからかなあ?」と、やんわり指摘されたこともありました。「恥ずかしがり屋ですから……ごめんなさい」
その場は、切り抜けましたがアイコンタクトは、
●好感を抱かれる
●聞き上手になる
●話し上手になる
コミュニュケーションが楽しくなる要です。
相手と目が合うことで、情報を得ることができる。と同時に、あなたの目を通して、あなたの気持ちも伝えることができます。
目を合わせないと、
「私に興味がないのかな?」
「信用されていないのかしら?」などと不安を覚えてしまいます。
アイコンタクトができないということは、縁や運、仲良くなるチャンスを自らつぶしているのと同じなのです。
初対面の人とアイコンタクトができないとしたら、信用や好意はまず得られないと考えた方がいいでしょう。アイコンタクトは、お互いに打ち解けようとする心の証しです。

「アイコンタクトは重要」とはいっても、全て目を合わせれば良いというものではありません。
あなたにも経験がありませんか? たとえ好意を抱いている相手からでも、じっと見つめられると居心地が悪い。目をそらしていいのか? 困ってしまう。身を乗り出すように凝視されたら、退いてしまいますよね。
大まかな目安ですが、アイコンタクトが30%を超えると 凝視されている気分になり、相手は落ち着かなくなってきます。ですから、適度に目線を外す気遣いも必要なのです。
あなたが聞き手のときは、視線を合わせる目安は会話全体の30%ほどで十分です。ただし、70%ほどの目線を外している時でも、「体の向き」は相手に合わせるようにしましょう。
そうでないと、仕方なく話を聞いている、儀礼的にアイコンタクトをしているようにも見え、不自然さは否めません。
あなたが話し手のときは、アイコンタクトは10%程度すればいいでしょう。
聞き手のときよりもアイコンタクトの割合が下がっても問題が生じないのは、
●やや上のほうを見て話しても、アイコンタクトをしているように見える
●手元に向かって話すのも不自然には見えない
●「あご」や「ネクタイの結び目」の周辺を見ても、アイコンタクトをしているように思われる
アイコンタクトをしようと構えずに、たまに目が合えばいいと考え実践すれば十分だからです。
もちろん、まったく相手の目を見ないで話すのは論外です。会話の重要ポイントや、しっかり伝えなくてはならないところ、数字や時間などは、相手の目をみるようにしましょう。
たとえば上司に、
「臼井商店では、予定の3カ月前に目標販売数量を達成する見通しです」
と報告する場合では、全て伝えるべき重要ポイントと捉え、
「臼井商店では、予定の3カ月前に目標販売数量を達成する見通しです」
という一文を、アイコンタクトをしながら伝えるのもいいですし、「臼井商店」や「3カ月前」のところで目を合わせるだけでもいいのです。
私は吃音や上がり症が改善されたとはいえ、トラウマがありますから、今でもアイコンタクトは得意とはいえません。ですから「これだけは絶対に伝える」という時は相手の目を見る。それ以外はちらっと見ればいいぐらいに考えています。
視線が合ったときに、あなたは気まずさを覚えたことはありませんか? 誰もが、相手を見つめ返す、見つめ直せるという勇気がある人ばかりではありません。
相手よりも先に視線を外すと逃げている感じがしますし、高飛車な印象を与えかねません。視線を外すのは意外と難しいのです。私が心がけているのは、「視線は縦に外す」ということ。
あなたが会話をしていて、相手が視線を外した場面をイメージしてみてください。もし「横」に視線を外されたら「嫌だ」「ダメだ」「ノー」など。拒否している印象を覚えるでしょう。
一方、「縦」ならば自然に捉えられます。さらにいえば、目線を合わせるのが苦手な方やシャイな方、話ベタを公言しているような方と会話をするときは、アイコンタクトをし過ぎないよう配慮する姿勢も必要です。相手が萎縮して 緊張してしまいますからね。
あなたが年長者や立場や職責が上の場合、ただでさえ相手は緊張していますから、2人だけで会話をする時には、適度に目を外してあげるのも愛情といえるでしょう。
私がアイコンタクトを得意としていないからかもしれませんが、シャイで視線を外してくれる方のほうが話しやすいですし、親しみを覚えます。
目力(めぢから)のある人は魅力的といいますが、印象は目力で変わります。爽やかな方、クールな人、優しい人、かわいらしい人など、目元の印象は、その人自身の印象に結びつきやすいのも事実です。
強いまなざしは確かに「ドキッ」とさせられ、引き込まれるような魅力があります。目力のある人たちに共通するのは、目元のたるみがなく、しっかり目が開いている、白目も澄んでいるということ。
もしあなたが、そういうタイプの方ならば、元々目にパワーがあるのですから「アイコンタクトは控えめに」を心がけましょう。本当に「チラ見レベル」で十分、相手にあなたの思いは伝わります。
アイコンタクトはコミュニケーションを豊かにするしぐさですが、「意識」はほどほどにしましょう。
「目線を合わせよう」
「アイコンタクトをしているように見えているかしら?」
「相手は気づいているのかな?」
などと考えていると、会話の楽しみを奪ってしまいます。
話に夢中になってアイコンタクトを忘れるくらいになるほうが、むしろいいのです。
次回は、「本物の『笑顔』で話す人は好印象。ちょっとしたポイントを知っているだけで、好感度が高まる術」をご紹介します。お楽しみに!
[2016年5月10日公開のBizCOLLEGEの記事を再構成]

1958年東京生まれ。健康プラザコーワ、ドクターユキオフィス代表取締役。理学博士、健康医科学博士、MBA、行政書士、宅地建物取引士、栄養士。33歳で結婚後、病身の夫の後を継ぎ会社経営に携わる。次々にヒット商品を開発し、独自のビジネス手法により通販業界で成功をおさめる。日本テレビ「マネーの虎」に出演。経営者、講演者、経営コンサルタントとして活動する傍ら、難関資格を取得した勉強法も注目される。ビジネス作家としても活躍。著作は50冊を超える。