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食べ物 新日本奇行 classic

北海道の赤飯はなぜ甘いか? そのルーツが解明された 日本の甘味処(2)

2016/5/27

PIXTA

今週はどんな話から入ろうかと考えたが、ハイシャがシカイシしたりするような話を書いているバヤイではないことに気がついた。メールの束がドーン。しかも長編力作が多い。これ紹介するの大変だぞってなわけで、今週は直球勝負なのである。

ご意見 私は赤飯に甘納豆が大好きですが、妻は小豆派で子供たちも甘納豆派と小豆派に分かれています。茶わん蒸しは栗の甘露煮です。卵焼きはいつも砂糖を入れています。また我が家では素麺や冷たいそばを食べるとき「砂糖が入ったいり卵」を薬味と一緒に入れています(札幌の紺野さん)

甘あー。

栗の甘露煮が茶わん蒸しに入る? 入らない?=PIXTA
ご意見 東京に住んで12年になります。祖母、母が作る赤飯は甘納豆、茶わん蒸しは栗の甘露煮が入ってて、どちらも甘かったですね~。お弁当に入っていた卵焼きも甘かったし、甘味地帯だったんでしょうね(函館出身のもうすぐ32歳さん)

あ、甘あ~。

すべての具を甘く煮る?
ご意見 北海道北見産の母が作る赤飯は食紅でピンクにしたものに甘納豆をかけて食べます。納豆は砂糖と醤油で食べてます。煮物も醤油に砂糖が多めの甘からーいこってり味のものが多いですね。また、茶わん蒸しの具はすべて一度甘く煮付けてあり、必ず栗の甘露煮が入ります。(中略)でも、みそ汁にみりんを少し入れるのはやりすぎだと思ってます。母はその方がおいしいと言って決行してます(東京のあさちゃん)

うわっうわっうわっ。

赤飯に砂糖
ご意見 徳島では普通、赤飯は甘くないです。ただし鳴門市域だけは赤飯に砂糖をかけて食べるようです。この境界線ははっきりしていて、字(あざ)が違えば隣の家でも「砂糖をかけるなんて見たことも聞いたこともない」という人と「赤飯に砂糖をかけないで、いったい何をかけるの」という人がいるといった具合(大西さん)
砂糖とごまをあわせた「ごま砂糖」?

私が徳島で話を聞いた人は地元タウン誌の編集者だったのですが、その人は鳴門出身だったのでしょうか。字が違えば食べ方が違うなんて、凄いですね。私は「日常の食べ物は保守的である」と思っていますが、ここまで保守的とは……

ご意見 以前、勤務していた新潟県長岡市周辺で赤飯といった場合、赤い色を出すのに食紅でも小豆の煮汁でもなく醤油を使っていました(新潟県上越市の食べること大好き!な岩野さん)
愛媛のしょうゆ豆 甘い

醤油味の赤飯? 四国の松山で「しょうゆ飯」という駅弁と遭遇したときに匹敵する衝撃。あー、びっくりした。

コメントが短いことにお気づきと思う。短いのである。昨夜の念入りな点滴のおかげで根性は入っているのだが、気力が……。気力なき根性というものがこの世に存在するとすれば、今はその状態。

東京下町のくず餅 黒蜜をかける
ご意見 私の考察です。戦後の甘味不足とは別の、砂糖が貴重品だった時代に甘味をどう扱ったか? これが分かれ道と思われます。江戸時代の奢侈(しゃし)の歴史が残る地域ではクレージーに甘い菓子が存在します。例えば(東京の)池上本門寺前にある茶屋の「心太」は黒蜜えら甘。(大阪府)堺の肉桂餅、芥子餅伝統タイプも甘いですね。金沢の菓子も相対的に甘みが強い。学生時代に福井田園部の友人宅で、異常に甘い茄子の煮物を食べた記憶があります。来客にはかつての貴重品、砂糖を多用する習慣が残っているかも(豊下製菓株式会社代表取締役 豊下正明さん)
宝の山?
ご意見 北海道の日本海側にある港湾都市が江戸時代から東北地方と交流があるため(赤飯の作り方は)青森以外の秋田、山形も同じような傾向があるのではと思います。北海道内でも入植者が全国から集まったので、この傾向はモザイク的のような気がします(小樽出身53歳さん)

「心太」は「ところてん」と読みます。「しんた」「こころぶと」と読みたい人も、今日だけは「ところてん」と読んでください。「こころぶと」を「こころてい」と読んだものが「ところてん」に転化したという説があるそうです。「えら甘」は「えらく甘い」という意味だと思います。

中津の空揚げ

ところてんと言えば三林京子さんが「ああ書けば、こう食う」の中で衝撃の秘話を明かしている。ここにその内容を書くわけにはいかないが、一読爆笑必至的内容である。

それはともかく、気力なき根性状態のときには、このような読者のご意見が非常にありがたい。

歴史と情報の伝播。つまり縦糸と横糸である。

大分のとり天

私はこのコラムのどこかで食べ物と時間、食べ物と情報伝達ということに触れなければと思い、一方でそんなこと書くなんてちょっと偉ぶってない?という内なる声もあって躊躇(ちゅうちょ)していたのだが、図らずも読者からご指摘をいただいた。

以前、西日本に鶏肉を偏愛する都市が点在しているのを発見したとき「なぜ、豚肉や牛肉ではなく鶏肉なのだろう」と考えた。その折の結論はある時代にある街に空揚げ(中津)とか焼き鳥(今治)とかチキン南蛮(宮崎)、とり天(大分)とか、せんざんき、骨つき鳥(高松)といった料理が生まれ「鶏肉はおいしい」という概念ができあがった。その後豚肉や牛肉が手に入るようになっても「鶏肉はおいしい」という概念を壊せなかった。つまり「記憶の固定」が起きたのではないかというものだった。

宮崎のチキン南蛮

甘いものも「甘味=高価」「甘味=ハレ」という「記憶の固定」があって今日に続いていると考えたらどうだろうか。豊下さんのご指摘の通りと思う。

食べ物は情報の一面を持っている。情報は伝達される。海上輸送のルートが北海道赤飯の伝播ルートであった可能性は高いと考えられる。

で、北海道式赤飯の考案者が判明した。なぜ判明したかというと「新宿の安倍(このアベが正解)さんがなぜK短大としたかは不明ですが、光塩学園女子短大のことです」(久保さん)、「札幌市にある光塩短大です!ホームページの中に書かれています」(大石さん)というメールをもらったからだった。うーむ、前回アベさんの字、間違えていたのである。ごめんなさいなのである。

半世紀前、赤飯に=PIXTA

光塩学園女子短期大学のHPにアクセスし「沿革」を開く。書き出しにこうある。

「あなたは、甘納豆入り赤飯をお好きですか。小豆ではなく、甘納豆の入った赤飯は家庭でも作られ、お店でも売っています。でも、この甘納豆入り赤飯が北海道特有のものだと知っていましたか。実は、この甘納豆入り赤飯を考え普及させたのは、本学初代学長の南部明子先生なのです」

そして昭和32年にHBCテレビ(北海道放送)が札幌に開局し、その直後から南部先生は料理講師としてレギュラー出演とある。同局のラジオ放送は5年前の27年に始まっているから、ラジオで作り方を紹介したのが発端なら、もう半世紀前に北海道式赤飯は誕生したことになる。

甘納豆の赤飯は、やがて北海道の大地に根を下ろす

それが道内に伝播し、さらに東北に伝わったと思われる。道内にも東北にも小豆を使った従来の赤飯文化が存在しただろう。既存の文化にかぶさるように甘納豆赤飯が普遍化していった過程は現時点ではわからない。普通は衝突や混交が起きるものだが、その形跡は果たして残っているのだろうか。興味深いテーマではある。

赤飯ではないが、ひとつの食べ物に関する異なった文化が衝突したらどうなるか。こうなる。

沖縄ぜんざいの豆
ご意見 沖縄の「ぜんざい」に使われている豆は金時豆です。大学祭で甘味の模擬店を開いたとき、本土出身と地元沖縄出身の女性が「ぜんざいの豆に何を使うか」で大騒ぎになったことがありました。互いに譲らず、食べ比べておいしい方を採用することになりました。2つの女性グループは夜を徹しておいしいぜんざいを作り、審査員をあの手この手で懐柔しようとしまして大学祭どころではなくなってしまい、年次長の大英断?にて「両方作る」「2つを混ぜるとさらにおいしい」という言葉をもって騒動を収拾しました。ここに文化を超えた新しいぜんざいが生まれたのでした。
看板メニュー?

めでたしめでたし。

話は一転して「ちょっと待ってくれメニュー」。

ご意見 先日、大阪出張の際「玉子アメリカ」という食べ物を初めて食したのですが、大阪ではメジャーな食べ物なのでしょうか。もしわかれば語源もぜひ知りたいのですが(東京の水野さん)

キャベツ+玉子焼き+トマトということだそうですが、何ですかこれ。これを一緒ぐちゃぐちゃにして焼いたものですか? それとも卵焼きでキャベツの千切りやトマトをくるんだものですか?

タイヤの町・久留米

私は都合3回計7年半ほどを大阪で過ごしましたが、こんなもん知らへんで。何やのん、これー。ひょっとしてアメリカ村で食べはったんとちゃいますかあ? あそこ、アメリカとか言うてるけど、むちゃくちゃ大阪でっせ。何しろたこ焼きを2枚のせんべいで挟んだもんとかが名物っちゅうくらいのトコやさかい。うー、大阪弁のマネは苦しい。

久留米弁でいくたいね。そーねー、そげなもんば食べなさったと? 悲しかねー。可愛そかねー。おいしかったね? おいしかったかも知らんばってん、びっくりしなさったやろうねえ。私もびっくりしたもん。知らんやったあ。そいけんあんた、語源やらなーんわからんとたい。以上。

セルフ?
ご意見 香川県高松空港近くのうどん屋で「おろしうどん」を注文すると、大根とおろしがねが出てきて自分ですりおろした大根おろしをかけて食べるのです。初めて行ったときには訳がわからず、大量の大根おろしをつくり、大変な目にあいました(桶川の小林さん)

目の前に大根とおろしがねが出てきたら、いきなり「店を手伝ってくれ」と言われたと思いますよね。人の分まで大量に大根おろし作ってしまいますよね。究極のセルフですか。

香川県内のうどん店にて

メールに書かれているように、讃岐のうどん屋の中にはネギを客が自分で刻む店があります。でも、讃岐のセルフの源流は製麺所に客が「食わせろ」と押し掛けた結果、製麺所が「食いたきゃ勝手に食え」ということで始まったということです。

うどん玉を自分で温めたり、つゆをタンクから注いだりといったことは当たり前です。でも、私は高松のセルフの店でタンクの栓をひねって自分の丼につゆを注いだときには感動しました。なぜ感動したのか、今となってはわかりませんが。

外国在住の方からのメールがとっても多くなった。ニホンノーカテイノーアジガーナツカシイデスカー?

ドイツ風台湾ラーメン?(本文とは関係ありません)
ご意見 ラーメン人気は日本だけじゃないですよ。LA、サンディエゴなど南カルフォルニアのラーメン屋は、特に日本人客のみにターゲットを絞った店以外は、アメリカ人客で一杯です。それだけではありません。(1)ユダヤ系に伝わり、今や米国民食となったチキンスープなるもの、これは塩味のチキンだしにチキンの肉とヌードルが浮いている。ほとんどラーメンに似ている(2)近所のユダヤ系レストランにあった「ミッシュモッシュ」なる食べ物。これはチキンスープにマッツォボール(肉団子のようなもの)と、そしてなんとゆでギョウザが入っている。どこからどうみても、肉厚のギョウザなんです(サンディエゴ在住の斎藤さん)

難しい「斎」の字が出なくてごめんなさい。漢字検索すれば出るんですが、さっき言ったように気力なき根性状態なもので、つい手抜きしてしまって…。アメリカのラーメン人気なんて、テレビの番組になりそうですね。もうなってるのかな?

恵方巻=PIXTA
ご意見 アメリカに来て日本人の方と話すたびに話題になるのが節分の太巻きです。関西では毎年節分の日になると各家庭で太巻きを作って、その年の方角を向いて無言で食べます。笑ったり、話してはいけません。(中略)よく考えると変な習慣ですね(「最近このコラムを発見し、楽しく拝読させていただいております」さん)
今年はどっち向き?=PIXTA

私が入社して大阪本社勤務になったとき、このような習慣が喧伝されることはありませんでした。その後11年を経て再び大阪勤務になったとき、すこし話題になっておりました。4年前の3度目の大阪勤務時代、コンビニに「恵方(えほう)」が掲示され太巻きが大々的に売られておりました。

お寿司屋さんやスーパーやコンビニにとってはこの習慣が広がってほしいでしょう。広がってほしいと思いますよ。言おうとしていることわかりますか?

ゆで卵療法?=PIXTA
ご意見 香港人の主人の母は孫が風邪をひくと必ず、コーラとレモンの薄切りを何枚か小鍋に入れ、炭酸がなくなるまで煮立てて飲ませます。あと、香港式の治療法として、打撲や打ち身で内出血した個所をゆで卵でマッサージすると内出血の跡が早く消えると申します。(中略)決定的なのは虚弱体質の子供には蛙の身入りのおかゆが一番だと言い張ります(シドニーのそのみさん)

ゆで卵って熱い状態で痛いところをスリスリするんですか? 冷たくなってもいいんですか? 堅ゆでと半熟とどっちが効果があるんでしょう。蛙の身入りおかゆを食べると子供が飛んだり跳ねたりするようになるんでしょうか。コメントに困ると質問攻めにすることにしていますが、これでいいんでしょうか。

だし巻き? 厚焼き?
ご意見 だし風味の「だし巻き卵」と甘めの「厚焼き卵」の2つが違う食べ物として扱われていましたが、私の知る限りにおいては「厚焼き卵」も「だし巻き卵」も、だし風味+砂糖で甘くてなおかつだし風味がガツンときいているものです。それが普通だと信じて生きてきました。甘いだけの厚焼き卵も、だし味だけのだし巻き卵も知りません(イギリス留学中の牛見さん)
大阪では出し巻きはメーンディッシュ?

ちょっと説明させてください。二つの卵焼きを別の食べ物として区分しているのではなく、同じ卵を焼いた料理の傾向を甘さという尺度で比較しようという趣旨です。もちろん、関西のだし巻きに全く甘みを加えていないとは言っておりませんし、関東の厚焼き卵がまったくだしを加えないと断定しているわけでもありません。傾向です。どっちに偏っているか。嗜好といってもいいかも知れませんね。

大阪の飲み屋には「だし巻き」というアテ(酒の肴)が普通に存在しますが、東京では見掛けません。大阪の食堂には「だし巻き定食」がよくありますが、東京では見掛けません。これは、少なくとも大阪のだし巻きが昆布を中心としただしのうまみを強調したもので甘みがほとんどないから酒の肴になったりご飯の友になるのです。

名古屋のあんかけスパゲティ

正確に言うと、大阪のだし巻きもほのかに甘い。ほのかに甘いですが、甘くはありません。牛見さんがお書きになっているように、今回の調査でその境界線や飛び地がみつかると面白いと思っています。

いつもメールを下さる愛知県知立市の学生さん。名古屋情報をやろうと思っていましたが、来週まで待ってください。「あんバタ」情報も来週です。

飲むまいと思う心も日暮れまで

ううー、気力が尽きようとしている。気力のライフゲージが無くなるすんぜんだあ。すんぜんを漢字に変換する気力もないほど気力がなくなった。考えてみたらいつもより400字詰原稿用紙換算で5枚も多く書いてしまった。どうしてこうなったのだろうか。♪なんでだろーおなんでだろーっと。こうなったら点滴打つしかないか。

「飲むまいと思う心も日暮れまで」(泰申)。もう一句。

「春雨が頭皮にしみる五十路かな」(泰申)。これ、三十路でも四十路でも使えますから便利ですよ。みなさんも使ってください。いや?

(特別編集委員 野瀬泰申)

[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]

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