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焼物 塩、串、炭…それぞれに意味があり美味もたらす

京都「木乃婦」3代目若主人 高橋拓児

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NIKKEI STYLE

それでは焼物について詳しくお話をしていきましょう。

焼物は数ある加熱調理法の中でも、高い温度で調理することが特徴です。焼くことで表面のたんぱく質が短時間で固まり、肉組織の内部に含まれるビタミンや無機質などの栄養分が破壊されたり、脂肪分や肉汁が流れ出てしまうのを防ぐことができます。つまり成分の損失が少なくてすむのです。

また表面を焦がすことで、たんぱく質を炭化させて糖質をカラメル化させたり、でんぷん質などを糊化させたりすることで、香ばしい味に変えます。そしてもうひとつ、胃液の分泌を促すので消化に時間がかかるものの栄養吸収に効果的という点も挙げられます。さらに高温調理なので殺菌作用も高いといった特徴があります。

焼く前に必須の下ごしらえ、塩の秘密

魚を塩焼きにする時の下ごしらえとして塩をしますが、これは塩味をつけるというよりも、塩によって魚の身に含まれる水分を切り、身を締めて崩れにくくし、さらに香味や焦げ色を出しやすくするためです。

まずは魚に塩をふってしばらく置いて、魚の身に塩を浸透させます。置く時間は魚の種類により異なります。しばらく置いておくと、塩が身肉に浸透するばかりか、たんぱく質分解酵素がはたらいて、うま味成分でもあるアミノ酸が増えます。また、この間に塩が筋肉たんぱく質の結合を網目構造に変え、ゲル状になるので、焼いた後食感にやや弾力が出てきます。

魚の種類にはよりますが、甘鯛のような白身魚に3%の塩をして置いておくと、うま味成分は1時間後には4倍、4時間後には5倍になるのです。

ただし鮎のような繊細なものは、塩味によって持ち味が損なわれるので、焼く直前に塩をふるようにするといいでしょう。青魚は身質に水分が多いので、一定時間を置いて塩を浸透させた方が美味しく、また脱水作用もはたらいて焼きやすくなります。

塩は肉質を固める作用のほか、魚の臭味を抜くという作用もあります。魚臭の強い青魚に塩をする時は、ザルに並べて生臭い汁を落とすようにするのもポイントです。

焼く際に使用する塩は食塩よりも粗塩や岩塩が望ましいです。その理由は、粗塩や岩塩の方がにがりが多く含まれているので、吸湿性が強く、たんぱく質の凝固作用も大きく、うま味の構成要素もあって味の形成に役立つからです。

また塩には防腐作用もあることから、塩蔵法も普及しました。そして塩蔵法よりも優れた細菌繁殖予防のためにと考え出されたのが、干物などの乾燥法です。ほかにもみそ漬け、柚庵漬け、醤油漬け、粕漬けなどの方法があり、これらもやはり水分を取り去りながら調味料の香味を浸透させ、焼くことによって風味を発揮させるものです。

日本料理における塩の使い方で、特徴的なものは化粧塩です。おそらく海外の料理にはこういう使い方はないように思います。

魚を姿焼きにするには、時間がかかるので、身に火が通るまでにはひれが焦げ、また、ひどいときは焼け落ちてしまって、仕上がりがあまりきれいではありません。これを防ぐために、ひれに塩をすりこむようにつけるのです。この塩のことを化粧塩といいます。こうするとひれは焦げず、きれいな形で残ります。

ただし、鮎の場合、それほど大きくないならば、化粧塩をせずに焼くとひれも香ばしくなり、身と一緒に食べられます。ちなみに鮎に塩をふる時はミネラルの豊富な岩塩を使った方がうま味がのります。

焼き魚の美味しい作り方を科学する

日本料理の魚の焼物の特徴として、魚の串打ちがあります。最も一般的な打ち方は姿焼きにする踊り串です。泳いでいる姿を模して魚体を曲げて打つやり方で、目にする機会も多いのではないでしょうか。呼び方は踊り串(波打ち)、のぼり串(うねり刺し)など多少違いますが、基本は同じです。

金属は熱伝導率が高く、食材に金串を通して焼くと、食材の外に出ている金串部分も一緒に加熱され、この熱が食材の内部に伝えられます。つまり表面だけからでなく内部からも加熱されるので、火の通りが早くなるのです。

肉を柔らかく焼くには、肉の温度を65℃くらいまでにとどめておくことが重要です。肉を焼くと熱源から輻射熱、対流熱、伝導熱という3種類の熱が肉の表面に伝わりますが、内部には表面からの伝導熱が伝わります。この伝導熱は速度が遅いので、大きな塊肉の場合には、中心に火が通るころには表面付近の温度が65℃を超えてしまい、硬くなってしまうのです。そこで中心に金串を通せば、表面だけでなく金串からも伝導熱が伝わるので、加熱時間が短くなります。その結果、硬くなる部分が少なくなり、柔らかく仕上がるのです。

また、焼き魚は「盛りつけた時に表になる方を先に焼く」というのが基本です。切り身の魚の場合は皮目を表に、身側を裏にして盛りつけるので皮目から先に焼きます。

炭火で焼くと下の面から熱が入っていき、たんぱく質が熱で凝固し、さらに表面の水分が蒸発するので乾燥します。次にひっくり返して反対側の加熱を始めると、先ほどと同様に身が熱で固まり、表面が乾燥していきますが、ここで先に焼いた面は余熱と下から伝わってくる熱を受けて、たんぱく質の熱変性が続いている状態になります。

さらに温度が高くなると肉汁などが出てきて、下に流れ落ちます。すると後から焼いている面にはそれらが上から伝わって落ちてくるので、表面がぬれて乾燥しにくくなります。また肉汁などが熱源に落ちると燃えてすすになり見映えが悪くなります。よって、焼き魚は盛りつけた時に表になる方を先に焼くのです。また、炭火焼きをする際うちわで扇ぐのは、すすを防ぐためと火力を上げるためです。

焼き魚を盛りつける時は、波のように串を打って高さを出したり、片方を巻物のように巻きこんで焼いたりと、奥は高く手前は低く盛るという日本料理の鉄則を守ることが大事だと思います。べたっとただ器の上に置いた感じに見えないように注意しましょう。

付け合わせには酢取り生姜(ハジカミ)、菊花蕪、花蓮根などがよく使われますが、特に決まりはありません。ぽつんと端の方に置かずに、やや中央よりにまとめた方が引き立ち、魚との空間が三角形を描くように置けば美しく見えるように思います。

人類が食文化を手に入れたと認識できる、最初の加熱調理法が「焼く」ことです。囲炉裏端で竹串に刺さった鮎の塩焼きが、炭火を取り囲むように頭を下にして並んでいる姿を見て、焼ける香りを嗅いだとき、何かしら人類の起源やその悠久の歴史を感じ、太古の昔にタイムスリップしてしまうのは私だけでしょうか。

[「10品でわかる日本料理」(日本経済新聞出版社)から抜粋]

高橋拓児(たかはし・たくじ)

1968年京都生まれ。大学卒業後5年間「東京吉兆」での修業の後、実家である京都の老舗料理店「木乃婦(きのぶ)」の3代目若主人に。シニアソムリエ。京都大学大学院農学研究科修士課程修了。

木乃婦HP=http://www.kinobu.co.jp/

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