34倍に拡大されたこの種子は、チリのアタカマ砂漠で育つ、現代のトマトの近縁野生種(Solanum sitiens)のもの。現代の食用作物はどれも、科学者が作物近縁野生種と呼ぶ数百~数千年前の植物に起源を持つ。気候が急速に変動する今日、こうした野生種は、遺伝的多様性の低い現代の作物の弱さを補うものとして、改めて重要性を増している。研究者らは、作物近縁野生種の種子を収集・保存し、干ばつや塩分などのストレス要因に対抗できるかどうかについて、その遺伝子の評価を行っている。

トマト(SCANNING ELECTRON MICROSCOPE PHOTOGRAPH BY ROBERT DASH)

生産者は、洪水、干ばつ、生育時期のずれ、害虫、ミツバチなどの花粉媒介者の減少といった問題に直面する中で、うまく育ってくれる新しい品種の育成を試みている。米国のトマト専門家ブラッド・ゲイツ氏は、1990年代半ば以降、新たな品種の導入を進めてきた。よりよい品種改良と多様性の拡大が、トマトの生き残りと繁栄につながると、ゲイツ氏は言う。

ニンジンの繊細な葉先を300倍に拡大すると、いかにも堂々とした風情になる。ほかの多くの野菜同様、ニンジンもまた極端な干ばつや洪水の影響を受けている。ニンジンの種子は安定した湿り気を必要とし、断続的な乾燥によってダメージを受ける。過度の暑さは葉の成長と開花を早め、ニンジンを苦く、硬い木のような質感にしてしまう。

ニンジン(SCANNING ELECTRON MICROSCOPE PHOTOGRAPH BY ROBERT DASH)

カリフォルニアでは、長年の干ばつによる土壌の乾燥でニンジンが被害を受け、こうした条件に耐えうる品種の開発を目的とした実験が行われている。オーストラリアの研究者は、高温下で育ったニンジンは風味と触感に劣ることを確認しており、これはニンジンの生育に適する範囲がこの先、より寒冷で湿潤なタスマニアまで南下していくことを示唆している。

気温とCO2濃度が上昇するにつれ、ニンジンの栄養価は低下すると考えられる。「作物の近縁野生種」プロジェクトは、ニンジンなどの作物を近縁野生種と交配させ、干ばつ、暑さ、塩分濃度上昇への耐性を高めることを目指している。野生の植物を利用して、より多様な遺伝子を導入することは、困難が待つ未来においても、われわれにとって欠かせない作物をより丈夫かつ栄養豊富なものに保つ助けとなるだろう。

240倍に拡大した、花粉に覆われたケールの葯。米国では、有機食品の年間売上高が500億ドルを超え、さらに増加を続けている。これは食品の売上全体の6%にあたる。かつては地味な存在だったケールの需要の高まりが、この変化を象徴している。ケールはマーケティング戦略によってスーパーフードと名付けられ、健康意識の高い人たちにとって欠かせない食品という地位まで上り詰めた。

ケール(SCANNING ELECTRON MICROSCOPE PHOTOGRAPH BY ROBERT DASH)

しかし、有機農法がもたらす温暖化ガスのことを考えると、この状況は必ずしもいいことばかりとは言えない。大規模な有機農業が、従来より多くの温暖化ガスを排出している可能性を示す証拠はそろいつつある。多くの有機農場は、ディーゼルエンジンの機械を使って雑草や害虫を抑えている。また、そうした農場で育つ作物は耕作に強く依存している。

土を深く耕すと、土壌の健康や炭素吸収に必要な微生物や菌のネットワークが破壊される。多くの有機農場で使われている厩肥(きゅうひ)は、温暖化ガスであるメタンを増やす。工業型農業は、重機、化学肥料、殺菌剤、農薬、灌漑、自動収穫などを駆使して作物の収穫量を増やすことにたけている。今のケール栽培に欠けているのは、生物学的および生態学的に健康な土壌と炭素吸収能力を維持する専門的な知見だ。理想的な条件下で育てられたとき、ケールは真のスーパーフードとなるだろう。

コメの2つの葯と花粉を340倍に拡大したところ。10億人以上の人々が、稲作に経済的・文化的に依存している。米国北中西部のアニシナベ族とメノミニー族は、彼らがマヌーミンと呼ぶ野生のコメを、数百年間も持続的に収穫してきた。コメは彼らの文化の中心であり、メノミニーという名も米に由来する。

コメ(SCANNING ELECTRON MICROSCOPE PHOTOGRAPH BY ROBERT DASH)

コメは重要であるがゆえに、栄養分の減少や塩害といった脅威が、各地で人道的な影響をもたらしうる。「ゴールデンライス」と呼ばれる遺伝子組み換え米は、バングラデシュとフィリピンで生産が承認されており、その高いビタミンA含有量が、子供たちの命を救うと考えられている。一方、遺伝子組み換えに反対する人たちは、ビタミンA不足を補うのに適切な植物としてサツマイモ、ニンジン、モリンガの実などを推奨している。

稲は土壌からケイ素を吸収し、それをもみ殻に沈着させて種を害虫から守る。ケイ素を含むもみ殻は、タイヤやシリコンウエハー、歯磨きペースト、電池などの産業に再利用できる。もみ殻はまた、土壌中に炭素を蓄えるのを助けるバイオ炭の生産にも使われる。しかし、一部の推測では、稲の根に繁殖するバクテリアがガスを放出するため、田んぼは世界のメタンガス排出量の17%を占めるとされる。現在、このバクテリアを除去する新しい農法を開発中だ。