日経ナショナル ジオグラフィック社

2021/11/15

ベリタスは軌道上から金星の重力場の地図も作製する。この地図は、金星の内部構造の研究に役立つだけでなく、活火山の兆候を探すのにも役立つ(金星には地球のような地殻プレートがないため、主に活火山を通じて熱を放出していると考えられている)。

金星のアトラ地域にあるサパス山は、大きな火山だ。画像はマゼラン探査機のレーダー探査データを用いてコンピュータで作成されたもの(PHOTOGRAPH BY NASA, JPL)

金星の地質史と現在の活動レベルを把握するには、今ある地図よりもはるかに詳細な地図が必要だ。ベリタスは、レーダーと地形計測により金星の表面(その面積は地球上の大陸の3倍を超える)のデータを収集して地図を作製する。エンビジョンは、金星の表面の約25%について、詳細な地図を作製する。米セントルイス・ワシントン大学の惑星科学者ポール・バーン氏は、これらの地図は金星の地形に関する私たちの知識を一変させるだろうと言う。

「私たちは全く新しい世界を知ることになるでしょう」

金星探査車への道

NASAの惑星探査戦略は、数十年前から基本的に変わっていない。まずは惑星の近くを通過させ、次に惑星の周りに周回機を飛ばし、着陸機を降ろし、最後に地表を走り回る探査車を送り込む。

現在、火星では探査車「パーシビアランス」とその仲間たちが表面を走り回っているが、金星探査はまだ周回機の段階にとどまっている。

しかし、金星の天候、大気と地表の相互作用、地表の正確な組成、地震活動などの疑問を解くには、長期にわたる地表探査が必要だ。NASAなどでは、金星の過酷な環境でも機能する電子機器やその他のハードウェアの開発が進められている。現在の課題は、着陸機に電力を供給する方法と(金星の雲の下では太陽エネルギーが不足するため)、観測結果を地球に送信するための通信システムの設計だ。

研究者たちはすでに、金星表面の高温・高圧や、反応性の高い腐食性の大気を模した実験室の環境で、回路、センサー、シールドなどの小さな部品のテストを行ったり、サブシステム全体を数カ月にわたってチャンバー内に置いたりすることに成功している。彼らは2025年末ごろには、小型の金星着陸機の試作品をこうした環境で60日間動作させるテストをしたいと語る。

NASAの惑星科学部門を率いるロリ・グレイズ氏は、「金星の表面で数週間でも作動し続けられれば、絶対的な変化をもたらすでしょう」と言う。

金星の表面で撮影された風景を見ることは、隣の惑星に対する私たちの見方を根本的に変えるだろう。それは、火星の表面で撮影された画像が、それまで赤みがかった点にしか見えなかった惑星を、山々やクレーターや峡谷のある広大な世界に変えたようなものだ。

近い将来、新しい技術が私たちの姉妹惑星の姿をより鮮明に見せ、これまで考えもしなかった疑問を投げかけさせ、私たちが想像する以上に美しく、恐ろしい景色を見せてくれることだろう。

(文 NADIA DRAKE、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年10月24日付]