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健闘目立つ3つの2人組

改めてランキングを見てみると、なんと1位から13位まですべて3人以上のボーイズグループが独占していることが分かる。CDシングルやCDアルバムでもボーイズグループの強さは表れているが、映像ソフトではその傾向がより顕著だ。高画質な映像コンテンツを大画面で楽しむ場合、ズームで撮影した際のキャラクターとしての魅力、そして空間全体を演出したときの魅力、その両方を出すには、やはりそれなりに人数がいたほうが有利だということだろうか。

そう考えると、14位のKinKi Kids、15位のB'z、17位の東方神起という3つの2人組の存在感が目立つ。KinKi Kidsは、総勢79人のオーケストラによる配信ライブ(少年隊のカバーメドレーや鏡餅とミカンの被り物の2人が登場など意外な一面も)。B'zは32年間の活動集大成となる5週連続の配信ライブを収録した5枚組で約3万円。売上金額では、3位のSnow Manとほぼ同レベルだ。いずれも、ライブを開催するのが難しくなり家で過ごす時間が増えたコロナ禍だからこその企画だろう。

19位にはトップ20で唯一の女性グループ、乃木坂46がランクインしている。なお、トップ30まで広げると、欅坂46(現在の櫻坂46)、日向坂46などの坂道グループや、「楽器を持たないパンクバンド」として注目されるBiSHといった女性グループも見られる。

さらに、20位に藤井風が男性ソロで唯一ランクインした。同作は、日本武道館でのワンマンライブを収録。彼の天才肌の演奏や、自由自在な歌唱はNHK紅白歌合戦でも話題を呼んだ。21年4月発売以来、毎週数百枚以上の売り上げを積み重ねており、22年に発売された2ndアルバム『LOVE ALL SERVE ALL』と共に、さらなるロングヒットとなりそうだ。

ボーイズグループの寡占状態になっている映像チャート。しかし、振り返れば10年代はその対極となる女性ソロの安室奈美恵が、MCもほとんどなく、アスリートさながらにストイックに歌い踊る映像ソフトで常に年間トップ10入りしていた。今回のランキングを見ながら、「やはり安室ちゃんは偉大だったのだ」とあらためて実感した。

臼井孝
 1968年生まれ。理系人生から急転し、音楽マーケッターとして音楽市場分析のほか、各媒体でのヒット解説、ラジオ出演、配信サイトの選曲(プレイリスト【おとラボ】)を手がける。音楽を“聴く/聴かない”“買う/買わない”の境界を読み解くのが趣味。著書に「記録と記憶で読み解くJ-POPヒット列伝」(いそっぷ社)。渋谷のラジオにてレギュラー番組『渋谷のザ・ベストテン』放送中。 Twitter @t2umusic