日経ナショナル ジオグラフィック社

2022/2/14

狙われる国鳥

フィリピンは世界的に見ても長いロックダウン(都市封鎖)を経験してきた。経済が低迷するなか、食料や違法取引のために保護動物を狩猟するケースが増えている。

エコツーリズムが停止すると、レンジャーは職を失い、保護区は密猟者などの侵入から無防備な状態になった。

頂点捕食者であるフィリピンワシは、森の健全性のバロメーターでもある。1組当たり70~130平方キロの森を必要とするつがいの存在は、健全な生態系の証しだ。体重約4.5~8キロ、両翼を広げると平均2メートルほどで、世界最大級の鳥だ。7641の島からなるフィリピンでも、4つの島でしか確認されておらず、大部分がミンダナオ島に生息する。

保護動物を殺すと懲役刑と高額の罰金が科される野生生物保護法や、国民の意識を高めるキャンペーンが功を奏し、フィリピンワシが戦利品として狩猟されることはなくなった。「しかし、山地には貧困の問題があり、生活向上の機会が不足しています。そのため、これらのワシを食料や珍しいものとして、つまり、金もうけのチャンスと見ている人は今もいます」とイバネス氏は指摘する。

サルなどの大きな獲物を連れ去ることから、サルクイワシとも呼ばれるフィリピンワシ。フィリピンワシ基金は救助、リハビリ、飼育下繁殖などを通じてフィリピンワシの保護に取り組んでいる(PHOTOGRAPH BY PATRICIO ROBLES GIL, NATURE PICTURE LIBRARY)

地元住民が森の番人に

環境自然資源局は救助されたワシをすぐにフィリピンワシ基金に引き渡した。このワシはわなにかかった村にちなみ、ラジャ・カブングスアンと名付けられ、推定5歳とされた。ラジャ・カブングスアンは8カ月にわたり、アポ山の麓にあるフィリピン・イーグル・センターで暮らした。

獣医師の評価によれば、ラジャ・カブングスアンは「頭が良く、注意深く、反応が早い」個体で、センター滞在中に「体重がかなり」増えた。

21年11月、ラジャ・カブングスアンは全地球測位システム(GPS)発信機を装着され、南スリガオ州の森に戻された。

リハビリを終えたワシを放つたび、フィリピンワシ基金は地元の関係者と協力し、ワシの生息地とその周辺で野生生物に関する啓発活動を行う。

また、先住民コミュニティーのメンバーに森の番人として活動してもらう訓練も行っている。

ラジャ・カブングスアンを救助した経験をきっかけに、マフモック氏とゲイオド氏は訓練を受け、レンジャーになった。2人は先祖代々の土地を飛ぶラジャ・カブングスアンを見守りたいと話している。そして、いつかこのワシが家族を持ち、子育てする姿を見たいと願っている。

「私たちにとって、彼はシムワノンの一員でもあります」とゲイオド氏は語る。「彼が私たちの土地に戻ってきたことは若者に大きな影響を与えており、自分たちの森を守る必要があるのだと若い世代に教えてくれました」

(文 JHESSET O. ENANO、訳 米井香織、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2022年1月21日付]