耐えがたいかゆみで悩んだら
長い間、医療の世界でかゆみは「痛み」ほど重要視されてこなかった。しかし、かゆみを感じるメカニズムが解明された今、患者のQOLを低下させる重要な症状として世界中で研究が進んでいる。
ただ、最新研究と実際の医療のギャップはまだ残っている。高森特任教授は「アトピー性皮膚炎をはじめ抗ヒスタミン薬が効かないかゆみの病気は多いが、日本ではまだ漫然と処方されているケースも少なくない」と言う。
特に原因不明のかゆみの場合では、患者が多くの医療機関を渡り歩くケースも多い。高森特任教授は「かゆみの原因となる基礎疾患がないか、まずはしっかりした検査を受けてほしい。高齢者では多種類の薬を併用していることも多い。かゆみを誘発する薬剤は多いので、適正かつ最小限の処方を心がけることも重要だ」と話す。
そして、正しい保湿とスキンケアを心がけた上で(前回記事「『かゆみ』の悪循環を断つには 保湿と紫外線で対策」参照)、かゆみの治療に積極的で抗ヒスタミン薬以外の治療の提案をしてくれる皮膚科医に相談し、自分に合った有効な治療法を見つけていくことが重要だ。皮膚掻痒症を改善できる治療法として専門家が科学的に評価した「皮膚掻痒症診療ガイドライン」の2020年版でも、神経痛などに用いられるプレガバリン、漢方薬、カプサイシンを含んだ軟膏、抗不安薬などの向精神薬など複数の治療の選択肢が示されている。
高森特任教授は「かゆみの治療はこれから急速に進歩するだろう。抗ヒスタミン薬だけにこだわらず、いろいろな治療法を患者と一緒に探してくれる医師を見つけ、自分に合った治療を探してほしい」とアドバイスしている。
(ライター 荒川直樹、図版制作 増田真一)
[日経Gooday2021年12月3日付記事を再構成]
