
世界に1万5000種がいると言われるアリ。その容姿も生活スタイルも様々だ。
サハラギンアリ(Cataglyphis bombycina)は、北アフリカの熱い砂の上を秒速85センチという猛烈なスピードで走り回る。人間の大きさに当てはめると、なんと時速640キロ以上に相当する。
「アリ界のダース・ベイダー」とも呼ばれているのが、ナベブタアリ属の一種ジャイアント・タートルアント(Cephalotes atratus)。南米の熱帯雨林に生息し、大きく扁平な頭を利用して木から木へ滑空することができる。

ハキリアリの仲間は、葉っぱを切り集めて地下でキノコを栽培する。人類が登場するはるか昔から「農業」を営んでいたのだ。そのなかには、外骨格が鉱物の「よろい」に覆われたハキリアリもいる。
写真家のエドゥアルド・フロリン・ニガ氏は、これらの他にも様々なアリの肖像を、新著『Ants: Workers of the World』(アリ:世界の働き者)に発表した。ニガ氏は作品を通じて、私たちの身近にありながら普段は目に見えないミクロの世界を、誰もが見られるようにしようと試みた。
「私が最初に魅了されたのは、このミクロの世界が自分の目の前で生命を宿すことでした」とニガ氏は話す。しばらく見ていると、「アリの社会が、人間のそれよりはるかに洗練され興味深く、いかに驚くべきものであるか」に気づいたという。
ニガ氏が撮影したアリの「顔写真」は、昆虫学者でさえ見たこともないような細部を描いており、新たな発見をもたらしている。
「エドゥアルドの写真は、私にとってまったく新しい世界への扉を開いてくれました」と話すのは、ニガ氏の協力者であり、ドイツでアリを研究しているロジャー・シュトロートマン氏だ。「彼の仕事がなければ、私は形態学的な詳細についてこれほど多く知ることはなかったでしょう」
