災害時にも役立つ アスクルの「フェーズフリー」商品

日経クロストレンド

アスクルは非常時だけでなく、日常的に利用できるフェーズフリー商品の展開を強化。オリジナル商品の開発や既存商品の利用提案などを組み合わせて認知度拡大を狙う。約20年前の商品がフェーズフリー提案で売り上げを伸ばす事例も

近年、商品・サービス開発の分野で注目を集めつつある言葉がある。それが、「フェーズフリー」だ。平常時と災害時という社会のフェーズを取り払い、普段使用している商品やサービスが災害時にも役立ち、かつ安全を守るという概念。“兼用”であるため、無駄なコストや備蓄スペースを省けることがメリットだ。アスクルでも、2019年からフェーズフリーの商品の取り扱いをスタートし、「バケツにもなる撥水バッグ」「ベッドになる強化段ボール」「目盛り付きデザイン紙コップ」など、斬新な商品を展開している。

フェーズフリー商品の一つ、heart bridge(ハートブリッヂ)の「バッグにもバケツにもなる超撥水バッグ」。強い撥水機能を持つ生地を表と裏の両面に使用し、日常ではぬれては困るものを雨から守れる上、非常時にはバケツとしても使える。使わないときにはコンパクトに収納できるのも特徴。税込み3278円

アスクルが、フェーズフリーの商品開発を行うきっかけになったのは、自然災害が多発する昨今、顧客の困りごとが顕在化してきたからだ。アスクルのユーザーを対象に企業における防災対策についてアンケートを取ったところ、関心や意識が低いといった声に加え、「準備が必要だと思っているが、予算がない」「備蓄にかかるコストが大きい」といった悩みを抱える声が目立った。特に、中小企業では課題が多いことが分かった。

そんな中、2018年に社団法人フェーズフリー協会が発足し、協会の代表理事である佐藤唯行氏と仕事上のつながりがあったアスクルでMRO・メディカル統括部長を務める西原利仁氏は、「ユーザーが抱える課題を解決する方法としてアスクルでも取り組んだらどうか」と考え、フェーズフリーのプロジェクトを立ち上げた。

通常、アスクルは購買データや顧客ヒアリングなどのデータを基に、徹底した分析を行って商品開発を行う。対して今回は、フェーズフリーという新しい概念が課題解決につながるという認識を基に、まだデータがあまりない中で商品開発を行っていくことになった。同社としては極めて珍しいケースだ。「当初は社内で理解が得られるか懸念があった。だが、『会社内に防災グッズの置き場所を確保する必要がなく、いつも使っているものが災害時にも使える』というフェーズフリーの社会的意義を説明して回り、経営陣やMD(マーチャンダイザー)から賛同を得られたことでプロジェクトをスタートできた」と西原氏は語る。

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MDから広く商品アイデアを募集し、一つずつ検証