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マンモス復活計画が始動 気候変動対策の切り札?

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ナショナルジオグラフィック日本版

米ハーバード大学の遺伝学者ジョージ・チャーチ氏と起業家のベン・ラム氏は2021年9月13日、「コロッサル」というスタートアップ企業を立ち上げ、絶滅したマンモスに似たゾウを遺伝子工学で誕生させるという計画を発表した。ケナガマンモス(Mammuthus primigenius)のDNAを使って、北極圏の気候に適応したアジアゾウ(Elephas maximus)とのハイブリッドを作るという。

後で述べるように、一部の科学者は、ハイブリッドゾウが北極圏にある永久凍土の融解を遅らせ、気候変動の影響を抑えられると考えている。長期的には、ハイブリッドゾウの導入により、現在はコケで覆われたツンドラを、約250万年前から1万1700年前まで続いた更新世の頃のように草が青々と茂った草原地帯に戻すことが目標だ。同時にコロッサルは、従来型の保護措置を補う技術など、高い収益が見込める新たなバイオテクノロジーの開発を目指す。

「絶滅危惧種であるアジアゾウと完全に交配できる、寒さに強いゾウを作ることが狙いです。マンモスそのものではなく、遺伝子を脱絶滅(de-extinction)させるのです」と、チャーチ氏は話す。

バイオテクノロジーを使って絶滅危惧種を保護し、さらに絶滅した種さえも復活させようという取り組みは、今に始まったことではない。09年に研究者たちは、00年に絶滅したピレネーアイベックスのクローンの作製に成功した。ただし、クローンはわずか数分間しか生きられなかった。

今年4月、カリフォルニア州を拠点とする非営利団体「リバイブ・アンド・リストア」とサンディエゴ動物園は、飼育下にある絶滅危惧種クロアシイタチの遺伝的多様性を取り戻すため、クローンを作製したと発表した。

そしてチャーチ氏によるマンモス「復活」計画も、以前から世界中の注目を集めていた。しかし、近い将来ハイブリッドゾウの誕生が期待できるかというと、そういうわけにもいかない。

コロッサルの計画は、ゾウにおいてまだ実証されていないいくつかの技術に頼っているためだ。同社の最も野心的な予定表でも、最初のハイブリッドゾウが生まれるのは6年後になるだろうと、チャーチ氏は言う。そのゾウが自力で繁殖して群れを作るようになるまでには、さらに数十年かかる見込みだ。

それでも、現時点においてさえ、コロッサルのやろうとしていることは重大な疑問を突き付ける。種の絶滅とはどういう意味なのか。現在危機的状況にある種の絶滅問題に対して、バイオテクノロジーは何ができるのか。そして何をすべきなのか。

コロッサルの登場で、それはもはや抽象的な話題ではなくなったと、大英自然史博物館の生物学者でマンモスを専門とするトリ・ヘリッジ氏は話す。「真っ先に抱いたのは、本当に現実のものになろうとしているのだ、という思いでした」

「更新世パーク」へようこそ

チャーチ氏が初めてハイブリッドマンモスへの思いを深めたのは、08年、ケナガマンモスのゲノム解析についてニューヨーク・タイムズ紙のインタビューを受けた時だった。

その後、リバイブ・アンド・リストアを創立したスチュアート・ブランド氏とライアン・フィラン氏に出会い、協力するようになる。ブランド氏とフィラン氏は、バイオテクノロジーを使って絶滅危惧種の数を増やし、さらに絶滅してしまった種を復活させるという研究に取り組んでいた。

「脱絶滅、そして私たちが遺伝子レスキューと呼ぶ概念は、希望の物語であり、数百年間にわたって人間が与えてきた損害の一部を修復できるということです。ノスタルジアではなく、生物多様性を拡大させることなのです」と、フィラン氏は話す。

チャーチ氏は、ブランド氏とフィラン氏の招きで、12年と13年に米ワシントン特別区のナショナル ジオグラフィック協会本部で開催された世界初の脱絶滅に関する会議に参加した。

その席でチャーチ氏は、ロシアの生態学者で、ロシア連邦サハ共和国の町チェルスキーにある北東科学基地所長のセルゲイ・ジモフ氏に出会う。1980年代からシベリアの永久凍土を研究しているジモフ氏は、その融解に伴って大量のメタンと二酸化炭素(CO2)が大気中に放出されるだろうと警鐘を鳴らしてきた。

しかし同時に、その炭素をどうやって地中に留めておくかについて、ジモフ氏はあるアイデアを持っていた。それを検証するため、1996年に息子のニキータ氏とともに、チェルスキーに近いツンドラの土地に、フェンスで囲った「更新世パーク」を開設した。そこへ、シカ、バイソン、トナカイ、フタコブラクダなど大型の草食動物を導入して、動物たちが大地へ与える影響を調べている。

数万年前の更新世の頃、ヨーロッパ、アジア、北米大陸の大部分は、肥沃な草原に覆われ、多様な草食動物が所狭しと歩き回っていた。ところが1万年前には、おそらく狩りなどの人間による影響もあり、世界各地でマンモスを含む多くの大型草食動物が絶滅する。草を食べることで草原の環境を維持していた動物たちがいなくなると、灌木(かんぼく)や背の高い樹木、コケが生え始め、緑豊かだった草原は現代のようなツンドラやタイガに取って代わられた。

肥沃な草原を維持するためには、マンモスが欠かせなかったのではと、ジモフ氏は考えている。巨大な体で木を倒し、土を掘り返し、排泄物で栄養を与え、草の成長を助けた。さらに、重い足で雪と氷の大地を踏みしめ、北極圏の冷たい空気を永久凍土の奥深くまで押し込んでいたのだろう。

更新世パークにはマンモスはいないが、フェンスの中に現在放されている草食動物たちが、既に大地の再生に貢献している可能性がある。20年3月に学術誌「Scientific Reports」に発表されたジモフ氏らの論文によると、冬の間、更新世パークの踏み固められた土は、公園の外の土と比べて温度が6度以上低くなる可能性が示された。

積み重なる技術的な課題

コロッサルの最終目的は、十分な数のカギとなる遺伝子を操作して、マンモスのように北極圏の寒さに適応する「代用」種のゾウをアジアゾウから作ることだ。

ケナガマンモスとアジアゾウが別の種に分かれたのは600万年前だが、大英自然史博物館のヘリッジ氏によると、2種のDNAは99.9%以上同じだという。だが、ゾウのゲノムだけでも30億塩基対もの長さがあるため、わずか0.1%以下といってもその違いは膨大な数に上る。科学者たちは、操作すべき遺伝子をそのなかから探し出さなければならない。

現在コロッサルのチームは、脂肪の蓄積、寒い環境で酸素を維持する血液の機能、マンモスのトレードマークである厚い毛皮に関わる遺伝子など、60個以上の遺伝子に着目している。

また、マンモスの遺伝子をアジアゾウのDNAに挿入するときには、多くの遺伝子を一度に改変する必要がある。この点に関してチャーチ氏の研究室では、別の動物を使って研究を重ねてきた。これまでに、ブタの臓器を人間への移植に利用するため、「クリスパー・キャス9(CRISPER-Cas9)」と呼ばれる遺伝子編集技術を使って、ブタのゲノムを数十カ所1度に改変することに成功している。

最大の懸念は、そうやって作った受精後まもない胚をどう育てるかだ。アジアゾウは絶滅危惧種であるため、コロッサルは代理母を使わず、人工子宮の開発を検討している。

ヒツジを使った過去の実験では、人工子宮で4週間まで胎児を維持させることに成功している。マウスでは、5日目まで発達した胚を6日間維持できることも示された。しかし、どんな哺乳類でも胎児を臨月まで人工子宮で育てた例はない。

コロッサルは、それを世界で初めて現生のゾウでやり遂げようとしている。ゾウの妊娠期間は2年近くにも及び、生まれてくるゾウの体重は90キロ以上ある。

倫理的な問題も山積み

動物を使った実験は何であれ、倫理的問題に直面する。しかも、ゾウは寿命が長く、高い知能を有し、複雑で数世代にわたる母系社会を形成している。

古代のマンモスに関する研究では、マンモスにもゾウとよく似た社会的特徴があったことが示されている。では、初めて誕生するマンモスとゾウのハイブリッドは、どのように扱い、交流させればよいのだろうか。将来形成されるであろうハイブリッドの群れは、北極圏でどのようにして生きることを学び、マンモスのような自分たちの文化を一から作れるというのだろうか。

コロッサルとジモフ氏は、もしハイブリッドゾウが誕生したあかつきには、更新世パークでその何頭かを受け入れるという非公式の約束を交わしている。現在は20平方キロの狭いパークだが、いずれは144平方キロまで拡大する予定になっている。

また、コロッサルのビジョンを完全に実現させるとなると、広大な北極圏のツンドラをゾウが暮らせる場所に戻さなければ、世界の気候に影響を与えるまでには至らないだろう。

しかしそのためには、土地使用の問題、既存の野生生物への影響、世界的なガバナンス、そしてロシアの北極圏に暮らすおよそ18万人の北方先住民への影響など、検討すべきことは山のようにある。

(文 MICHAEL GRESHKO、訳 ルーバー荒井ハンナ、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年9月15日付]

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