日経ナショナル ジオグラフィック社

2022/1/14

寄生生物はじつに多様だ。たとえば、両生類の鼻孔の中にすむハエの一種や、魚の舌にくっつくウオノエなどがいる。ウオノエは甲殻類の一種で、宿主の器官と置き換わるとされる珍しい寄生生物の一つだ。

寄生生物は、ただ宿主に寄生するだけではない。宿主の生殖能力を低下させたり、免疫システムを乗っ取ったり、宿主自体を操ったりすることもある。ノムシタケ科の菌類には、宿主となったアリなどの虫を「ゾンビ」化するものがいる。ゾンビとなった宿主は、胞子をまき散らすために都合の良い高いところまで登らされてから、死に至る。地面に落ちた胞子は別の虫に付着し、このサイクルが繰り返される。

宿主のアリの死骸から発芽したオフィオコルディケプス属の菌類(PHOTOGRAPH BY ANAND VARMA, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

間接的に資源を奪う寄生生物もいる。カッコウは、他の生物に子どもを育てさせる托卵(たくらん)という寄生を行う。別の鳥の巣に卵を産むことで、その鳥に子どもを育ててもらうのだ。

小さくても強力

寄生生物の中には、小さくても生態系に多大な影響を与えるものもいる。ヨーロッパ原産のイエローラトル(Rhinanthus minor)は、まわりの草から養分を奪う半寄生植物だ。

「花を咲かせる野草の中にイエローラトルがなければ、そこはただの草原に戻ってしまいます」とクワック氏は説明する。「しかし、イエローラトルがあれば、生存力の強い雑草の力が弱まり、さまざまな花が咲くことになるのです」

イエローラトルには、花粉を媒介する虫たちが活動する場所を作る役割もある。その結果、鳥類や両生類も集まってくる。

「イエローラトルは、野の花が咲く草原を支える土台です。繊細な植物が競争に負けないためには、イエローラトルが必要なのです」

寄生生物に寄生するものも

寄生生物への寄生は「超寄生(hyperparasite)」と呼ばれる。超寄生は、じつはとても一般的な現象だ。たとえば、ヒメバチ科の一種(Hyposoter horticola)の寄生バチは、ヒメバチ科の別の寄生バチ(Mesochorus cf. stigmaticus)に寄生されていて、後者は前者の幼虫に卵を産みつける。

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