日経Gooday

被験者は「ロカボ」に関するセミナーを受け、その後3カ月間、毎日食事記録をつけ、週1回の体重測定を行い、週1回の食事改善アドバイスを受けた。また、介入前後の血液、睡眠の質を評価したところ、以下のような結果が得られた(異常値を示していた参加者を対象にサブグループ解析をした結果より)。

●平均体重が有意に減少  85.0→83.0kg
●肥満指数のBMIが有意に低下 28.0→27.2
●HbA1cが有意に減少  6.7→5.8% (6.0以上だった人の平均値)
●LDLコレステロールが有意に低下 133→120 mg/dL
●無呼吸低呼吸指数(AHI)が有意に低下 25.1→17.2

体重やメタボに関わる数値が減少したのは予想通りだったが、予想外だったのは「睡眠の改善」だったという。ロカボの実践により糖質の摂取量が少なくなることから、体重やメタボに関する項目が改善したのは「予想通り」だと思われた人は多いだろう。実際、山田さんもこうした効果は予想していたそうだ。そんな山田さんが予想外だったのが、最後の項目の「睡眠の改善」だったという。

無呼吸低呼吸指数(AHI)とは
睡眠1時間あたりの「無呼吸」と「低呼吸」の合計回数をAHI(Apnea Hypopnea Index)と呼び、この指数によって睡眠時無呼吸症候群(SAS)の重症度を分類する。5以上15未満が軽症、15以上30未満が中等症、30以上が重症と定義される。

昼間の眠気が減りパフォーマンスがアップ

研究当初は、体重減少効果や脂質の指標など、メタボ改善効果を確かめようとしていた山田さんだが、「この3カ月間のロカボチャレンジは、参加者を替えて合計6回行ったのですが、1~2回目のときに参加者の方から『眠気がなくなり昼寝が必要なくなった』という声が多く聞かれたのです。そこで、指先にセンサーを入れるだけで睡眠時無呼吸症候群の指標を簡易チェックできる器械で調べてもらったところ、無呼吸低呼吸指数(AHI)が大きく改善していました。この研究は前後比較しか行っておらず、無作為比較試験のように科学的信頼度の高い研究とはいえないのですが、それでもこれほどまでの改善効果が得られたことには正直言って驚きました」(山田さん)。

ロカボで睡眠時の無呼吸低呼吸指数が改善した

メタボリックシンドロームまたは肥満のタクシー会社運転手とコンビニエンスストア従業員101人にロカボ食を実践してもらった。3カ月間、週1回の体重測定、血糖値測定を行い、介入前後に血液検査、睡眠の質を評価。その結果、睡眠時無呼吸症候群の指標となるAHIの値が有意に改善した。数値は、スタート時に血糖異常など異常値が見られた人を対象に行ったサブ解析結果による(データ:Diabetes Metab Syndr Obes. 2021 Jun 23;14:2863-2870. )

睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に舌の根元や軟口蓋(食べ物が鼻腔に入るのを防ぐ柔らかい組織)が喉の奥に落ち込み気道を塞ぐことにより、一時的に呼吸が止まる病気のことをいう。無呼吸状態になりしばらくして呼吸が再開するときに、大きないびきが起こるのが特徴だ。運転中の眠気による死亡事故などでも社会問題化しているので、聞いたことがあるという人も多いだろう。

「かつては肥満の中年男性がかかりやすい病気、と言われていましたが、肥満でなくてもあごがほっそりした人は男女関係なく気道が塞がりやすくなり発症リスクが高いことが分かってきました」(山田さん)

睡眠時無呼吸症候群があると、夜間に寝ているつもりでも眠りが浅くなるため、睡眠の質が悪くなり、日中に強い眠気や倦怠(けんたい)感が起こる。また、無呼吸があると血液中の酸素濃度が低下するために脳や体に供給される酸素濃度が低くなる。少ない酸素を全身に送るために心臓や血管に負担がかかり、動脈硬化や生活習慣病リスクが2~3倍高くなることが近年の研究によって分かってきた。たかがいびきの病気と甘く見る人もいるかもしれないが、実は全身の老化や突然死にもつながる危険な病気なのだ。

「被験者のタクシー運転手さんにアンケートをとったところ、ロカボの食生活に変えることによって運転中の眠気が減った人が3分の2を占めました。昼寝が必要なくなったことで、ハンドルを握っている時間が伸び、売り上げが上がった、と大変喜んでいただきました。食生活に気を付けたくてもお弁当などを作れる状況ではない方がコンビニ食など手軽に実践できる方法で健康になれた、そして生活の満足度が高まった、ということがなによりもうれしい収穫でした」(山田さん)

ロカボ実践によって昼間の眠気が減った理由について、山田さんは次のように説明する。