日経ナショナル ジオグラフィック社

2022/1/3

その結果、接種を1回でも受けていれば助かったはずの数百万の命が、世界中で失われることになった。

ワクチンが普及してもウイルスは撲滅できないかもしれない。普通の風邪を引き起こす4種類のコロナウイルスや、1918年のスペイン風邪のウイルスに由来するインフルエンザウイルスは、今も特定の地域で周期的に流行する。

新型コロナウイルスは今後も消滅はせず、変異を続けながら存在すると専門家はみている。それでも人間の側で免疫がつくので、流行は小規模になり、重症者も少なくなるだろう。

しつこく残るのはウイルスだけではない。数億人という感染者の1~3割が後遺症に長く苦しむおそれがある。ブレインフォグ(頭にもやがかかったようにぼんやりする)、記憶障害、疲労感、さらには勃起不全、月経不順、嗅覚・味覚喪失といった後遺症はまだ研究が進んでおらず、新たな治療薬や治療法が必要になるだろう。

いまだ多くの人がウイルスに無防備である以上、誰一人安全ではない。未接種の人は新たな変異株が生まれる格好の土壌になっている。ワクチン接種による免疫は、ウイルス感染で獲得する免疫より強力だ。接種に消極的な人を説得すると同時に、世界の隅々にまでワクチンを届けなくてはならない。COVAX(新型コロナワクチンを共同購入して全世界に分配する国際的枠組み)で確保されるワクチンは、22年初めには20億回分に達する見込みだ。

(文=英語版編集部 ビジャル・P・トリベディ、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[参考]ここでダイジェストで紹介した「コロナ禍」は、ナショナル ジオグラフィック日本版2022年1月号の特集の一つです。1月号ではまるごと1冊「写真が記録した2021」と題し、ナショナル ジオグラフィックが支援する写真家をはじめ世界で21年に撮られた象徴的な写真で、「気候変動」「対立・紛争」「保護・保全」を振り返ります。Twitter/Instagram @natgeomagjp

ナショナル ジオグラフィック日本版 2022年1月号[雑誌]

著者 : ナショナル ジオグラフィック
出版 : 日経ナショナルジオグラフィック社
価格 : 1,210 円(税込み)