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アイステントは白内障手術と同時に!「人生でワンチャンス」

緑内障患者の眼圧を下げる治療法は、従来の「点眼薬による薬物治療」「合併症などのリスクは比較的高いが眼圧を下げる効果の高い手術」に加え、「患者の体の負担の小さい低侵襲手術」、そして「体の負担がさらに小さくなったアイステントによる極低侵襲手術」がそろった。これらは患者の症状、進行のスピードなどを考慮して選ばれる。

例えば、アイステント手術は緑内障の初期から中期の一部の人に向いている方法で、症状のより重い人には濾過手術などが用いられる。アイステント手術は目への負担が小さいとはいえ出血などの合併症はある。ただ、濾過手術と比較して軽度だ。また、眼圧を下げる作用は濾過手術より小さいため、アイステント手術で十分な効果が得られないケースも考えられるが、その場合、他の方法での再手術が可能なこともアイステント手術の利点の一つだ。

また、アイステントによる治療は点眼薬の数を減らす効果を期待できるので、脳梗塞などの後遺症や関節リウマチで手の自由がききにくく点眼薬がうまく差せない患者や、認知症で決まった時間の点眼を忘れがちな患者とその介護者などの点眼薬治療の負担を少なくすることにも役立つ可能性がある。ただし、この治療を受けるにはいくつかの制約がある。

まず、日本眼科学会が作成したアイステントの使用ガイドラインである「白内障手術併用眼内ドレーン使用要件等基準(第2版)」によれば、この治療は製品や治療方法に関する講習を受け、一定の経験と技術が認められた医師しか施術できないことだ。この条件を満たしアイステントを使用している施設はGlaukos社のホームページで確認することができる。

さらに白内障(目のレンズである水晶体が白濁する病気)の手術と同時に行わないと保険適用にならないことも知っておきたい。白内障も加齢とともに多くの人がかかる病気で、緑内障と同様、早い人は40代から始まり、50代で5~6割の人が発症しているといわれる。アイステントは、もともと白内障手術(眼内レンズによる水晶体再建術)のときに行うことで、目の加齢性疾患に一度に対処できる医療として開発されている。

手術時間は、白内障の手術にかかる時間が1眼当たり15~30分で、同じ切開創から行うためアイステント手術は5~10分の追加でできる。費用は自己負担3割の場合、白内障手術込みで1眼約10万円(編集注:保険点数は白内障手術込みで27990点。1点=10円なので費用は27万9900円、その3割として計算)である。

須藤教授は「既に白内障手術を受けたことのある患者さんには残念ながら行えません。同時手術を受けられるのは『人生でワンチャンス』ですので、白内障手術を受けるときに、アイステントの治療について知識のある眼科医に相談してください」とアドバイスする。

自分の受けている眼科の検査を確認

最新医療の登場により治療の選択肢が増えた緑内障。失明はもちろん、視野の障害で快適な生活が損なわれることがないようにするには、やはり早期発見が重要だ。そのためには40歳を過ぎたら緑内障発見に適した眼科検診を定期的に受けることが重要だ。

眼科の検査には、企業などの健康診断でも行う「視力検査」のほか、「眼圧検査」や「眼底検査」「視野検査」などいろいろある。このうち視野検査は、緑内障による視野の異常を発見するための検査で、眼底検査による視神経乳頭所見や、網膜神経線維層の欠損と視野の欠損が一致すると緑内障と正確に診断することができる。緑内障の症状である視野の欠けを調べる「視野検査」だけでもいいのではと思う人もいるかもしれないが、須藤教授は「前視野緑内障といって、視野検査が正常でも、眼底写真などを調べると網膜の視神経に異常が認められることがあります」と指摘する。

図3 緑内障で行う主な検査

※このほか、基本となる視力検査や、隅角の開き具合を調べる隅角鏡検査なども行われる

緑内障の早期発見を実現するためには、まずは、ほとんどの眼科で比較的簡単に受けられる「眼圧検査」と「眼底検査」を定期的に受けることが重要だ。眼圧検査や眼底検査は人間ドックのメニューに入っていることも多い(眼底検査は人間ドックに眼科が入っているのが必須)。特に「肉親に緑内障の患者がいる人、強度近視の人はリスクが高いので、より積極的に検査を受けてほしい」と須藤教授はアドバイスする。具体的には、誰でも40代で1度、リスクの高い人は50代で5年に1度、65歳以上は2年に1度程度受けると早期発見につながる。

適切な検査と正しい眼圧管理。それが、人生100年時代にずっと快適な視力を守るために必要だ。

(文 荒川直樹=科学ライター)

[日経Gooday2021年9月10日付記事を再構成]

須藤史子さん
東京女子医科大学東医療センター(東京都荒川区)眼科教授。1988年東京女子医科大学卒業。92年同大学院修了(医学博士取得)。米国クリーブランドクリニック コール眼研究所留学などを経て、2016年より東京女子医科大学東医療センター眼科教授。監修書に『眼科スゴ技 白内障手術』(メディカ出版)、編集企画書『これでわかる眼内レンズ度数決定のコツ』(全日本病院出版会)がある。

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