徹夜明けのカフェイン「効く作業」と「効かない作業」

日経Gooday

カフェインは一時的に眠気を覚まし、活力を高めてくれるが…。(写真=123RF)
日経Gooday(グッデイ)

徹夜明けのカフェイン摂取には、視覚的な注意力を高める効果はあるものの、より複雑で難しい作業の能力の向上は期待できない――そんな実験結果が、米国で報告されました。

大学生を徹夜組と睡眠組に分け、翌朝カフェインを摂取

睡眠不足はさまざまな認知機能に悪影響を及ぼしますが、正確なメカニズムは分かっていません。仮説として有名なのは、注意力が散漫になるため、注意力を要する作業を正しく行えなくなる、というものです。確かに睡眠不足は、認知機能の中でも注意力を必要とする課題に一貫して悪影響を及ぼしますが、影響を受けないもの、影響が少ないものもあることは指摘されていました。

今回、米ピッツバーグ大学などの研究者たちは、「睡眠不足は、視覚的な注意力と、より複雑で難しい作業を行う能力の両方に悪影響を及ぼす」「カフェインは、それら両方に好ましい影響を及ぼす」と仮定して、実験を行うことにしました。

対象としたのは、ミシガン州立大学の学生です。日常的に、カフェインを適度に(1日400mgまで)摂取しており、心臓病ではなく、記憶障害や睡眠障害と診断されたことがない学生を選びました。

実験は2日にわたって行いました。前日は6時間以上眠り、当日は9時までに起床して、昼寝はしないよう指示しました。また、カフェイン、アルコールなどの摂取は前日の夕方から禁止しました。

実験1日目の夕方、実験室に集合した学生を対象に、視覚的注意力を評価する精神運動覚醒検査(PVT)と、手続き記憶の能力を必要とするUNRAVELタスクという2種類の認知能力検査を行いました。

精神運動覚醒検査(PVT)
視覚的注意力を評価する検査。コンピュータの液晶モニターに赤い丸が表示されたら、できるだけ早くマウスをクリックする。すると、その回の反応時間が0.5秒間表示される。赤い丸は1秒から10秒のランダムな間隔で表示される。この作業を10分間継続し、反応時間を評価する。

UNRAVELタスク
手続き記憶の能力を評価する検査。ソフトウエアを用いて、7項目からなる質問に順序正しく回答していく。終わったら最初に戻って、また、7項目実施する。繰り返していると、途中で全く異なる書き写し課題が挿入される。これを終えたら、中断前にやっていた項目に戻ってそこから続きの課題に取り組む。中断後に元の位置に正確に戻って再開できるか、また、中断なしに行っている作業において、7段階のどれかを抜かさずに順序正しく行えるかを調べて、エラー率を比較する。35分間かけて実施。

これらを完了した時点で、学生をランダムに、「実験室で徹夜するグループ」と「帰宅して睡眠をとるグループ」のいずれかに割り付けました。徹夜に割り付けられた学生は、読書をする、宿題をする、TVや映画を見る、ボードゲームやカードゲームをする、などの活動を朝まで行いました。

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徹夜組は朝のテスト結果が悪化、カフェインはPVTには