SUPER BEAVER渋谷龍太 バンドの挫折と前進、自伝風に

日経エンタテインメント!

2021年は映画『東京リベンジャーズ』の主題歌『名前を呼ぶよ』がヒットし、初の東名阪アリーナツアーも成功させた人気バンドSUPER BEAVER。そのボーカル・渋谷龍太が、バンドの実話に基づいて長編小説を書き上げた。

1987年、東京都生まれ。05年に高校の同級生である上杉研太(B)、後輩の柳沢亮太(G)、柳沢の幼なじみ・藤原“33才”広明(D)とSUPER BEAVERを結成、ライブ活動を開始する。22年2月23日に8枚目のフルアルバム『東京』をリリース。私生活では読書家(写真:アライテツヤ)

SUPER BEAVERの主戦場は、ライブ会場にある。年間100本が通常ペース。この1年は流れてしまった公演も多く80本程度にとどまったが、彼らがいかにしてかくも無類のライブバンドになったのか。短くない時間をかけて挫折から返り咲いた強さはどこにあるのか。その核心が本書では生々しいほどにたくましくつづられている。

「書いてる間はずっと楽しい時間でしたね。期限的余裕はなかったけど、“やらなきゃ”という感じはあまりなくて。移動中やライブ前のちょっとした時間とかを充てて一生懸命、楽しく書いてました」

バンドの歴史の中にはシリアスな場面も当然あるが、全体を通して文体は軽やかでユーモラス。360ページという長編ながら、絶妙なバランス感覚を保っているがゆえ、すらすら読めてしまう。自らの身に起きた出来事を客観的に書けるのは、渋谷がバンドにおけるメインコンポーザーではない点も関係しているのではないだろうか。

「ああ、それは大きいかもしれません。例えばレコーディングにあたって、楽器のプレーヤーである僕以外の3人はずーっとスタジオに入ってなきゃいけないから、すごく主観的なモードになりがちなんですよね。そんななかで唯一、客観的でいられるのが僕なので、あえてオケを録る作業の間はブースを離れてロビーにいるようにしてるんです。すると、音作りの過程や意味付けに影響されず、完全第三者の耳で“さっきのほうがよかった”“これはかっこいい”と率直なジャッジができる。普段のそういう役割が、ストーリーテリングの上でも作用したのかも」