「講演」で得た気づき 自分を見つめ直す(井上芳雄)第104回

日経エンタテインメント!

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井上芳雄です。ミュージカル『ナイツ・テイル-騎士物語-』の東京・帝国劇場での公演が終わってから、11月9、10、11日と3日続けて講演をしました。トークの機会は舞台上でもテレビ番組でも多いのですが、自分のことを語る講演となると、あまりしたことがありません。僕のことをよく知らない人たちに、なにに興味を持ってもらえればいいのか。いつもと違う雰囲気に戸惑いましたが、自分を見つめ直すいい機会になりました。

11月10日に開催された福岡桜ライオンズクラブpresents青少年健全育成チャリティコンサート『井上芳雄プレミアムナイト』(写真:hirakawa yuichiro)

11月9日は東京恵比寿ロータリークラブの例会、10日は福岡桜ライオンズクラブ主催のイベント、11日は僕の母校である西南学院の中高後援会合同会員研修会でした。自分のことを話して、大貫祐一郎さんのピアノ演奏で何曲か歌いました。どの会場でもうかがったのが、コロナ禍でずっと会を催せなかったのだけど、最近ようやく集えるようになったということで、どこも感染対策を徹底して、ソーシャルディスタンスをしっかりとって開催していました。会場ごとに雰囲気や来てくださった方の層が違っていたのが興味深かったですね。

東京恵比寿ロータリークラブは例会での卓話者としてゲストに招かれました。恵比寿のウェスティンホテル東京の宴会場で60~70人くらいの方を前に話しました。30分くらいと言われていて、歌もあったので、自己紹介や今やっていることを話したら持つかなと思って行ったのですが、結果的には、僕のことをあまり知らない方が多かったので、自分のどこに興味を持ってくれるのかを探すのが難しかったです。

導入はユーモラスなところから入ったほうがいいかなと思い、「ミュージカル界のプリンス」と呼ばれているのですが、今はたくさん新しいプリンスが出てきて……というネタで始めたのですが、あまり反応がなくて、いつものつかみが通用しないなと。それでちょっと焦りながらも、どうしてミュージカル俳優になって、どういう道筋で今に至ったかという話をしました。それで、こんな曲を歌ってるんですと言って、ミュージカル『モーツァルト!』から『僕こそ音楽』を歌うと、今度はすごく集中して聴いてくださっているのを感じて、やっぱり歌ってすごいなと実感しました。

後半は演劇界がコロナ禍でどんな影響を受けたかということと、そのときに僕が思ったこととして、もっと社会との接点を持っていればよかったという話をしました。聞かれている方もそれぞれの業種でいろんな影響を受けているだろうし、やっと共通点というか糸口を見つけたと思ったのですが、すでに終わり近くで、あっという間の30分でした。

最後は、僕が微力ながらサポートしている「こどもホスピス」の紹介をさせてもらいました。小児がんとか、幼くして重い病気にかかった人たちが家族で過ごせる場所が大阪と横浜にあります。一昨年『十二番目の天使』という演劇の公演で全国を回っているときに小児がんでお子さんを亡くされたご家族と出会う機会があり、お子さんが作品の主人公と同じように最後まで諦めなかったという話を聞いて感銘を受けました。そこで、このホスピスの存在を知り、個人的に応援しています。ロータリークラブのような社会奉仕団体の方だと、きっと興味を持ってくださると思い、パンフレットを配って支援のお願いをしました。実際、みなさん関心を持たれて、僕のファンクラブのチラシよりもずっと手にとってくださっていたので、やはり人の役に立つことにとても熱心な方たちなんだなと思いました。「こどもホスピス」は今回の3つの講演をやるにあたり、唯一僕から話をさせてほしいとお願いしたことなので、ほかの会場でも紹介させていただきました。

終わった後は、僕に興味を持ってくださった方から名刺をいただいたりして、人とのつながりをつくる場でもあることを知りました。僕が願っていた、自分なりに社会やいろんなジャンルの人たちとのつながりを持てたらということが、いただいたお話ではあるのですが、図らずも実現したことで学ぶことも多かったですね。

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保護者の前で話すのは全然違う