脂っこいものをたくさん食べるとさらにリスクが高まる

それでは、いったいどれぐらいのお酒を飲むと、急性膵炎を引き起こしてしまうのだろうか。その目安が知りたいところだ。

「アルコールの耐性には個人差がありますし、『これだけ飲んだら膵炎になる』という基準は分かっていません。ただ、『急性膵炎診療ガイドライン』では、純アルコールで毎日48g(日本酒換算で約2.5合)を摂取する人は、まったく飲まない人に比べて急性膵炎の発症リスクが2.5倍になるというデータがあります。また、何日も続けてたくさんお酒を飲むと急性膵炎になりやすい。ですから、年末年始や3~4月のように、宴会や飲み会が集中する時期は、急性膵炎の患者さんが多い印象ですね」(佐野さん)

ちなみに、2011年に急性膵炎を発症したお笑い芸人の福田充徳さんは、ビール2リットルに焼酎ロック3杯を1時間で飲んでいたという。明らかに飲みすぎだということは、医療従事者ではない筆者にも分かる。

コロナ禍では幸か不幸か、宴会や飲み会がなくなっているため、急性膵炎で運び込まれる人も減っているそうだ。だが、新型コロナが収束し、かつてのように宴会や飲み会が開かれるようになったら、また患者が増えていくかもしれない。

また、アルコールに加え、脂っこいものをたくさん食べると急性膵炎になるリスクが上がるそうだ。脂っこいものを食べると、それを消化するために膵液がたくさん分泌されるからだ。宴会で大量の揚げ物を食べてお酒を飲み続けるのはキケンかもしれない。

治療のあと待っているのは…「断酒」

では急性膵炎になったら、どのような治療を行うのだろうか。

「まずは膵液が分泌されないように、飲まず食わずの状態で安静にします。そのため、軽症であっても1週間ほど入院することになるでしょう。重症になると、膵臓だけでなくその周辺の組織まで壊れてしまい、10人に1人は亡くなってしまいます」(佐野さん)

恐るべし、急性膵炎……。しかも、それだけではない。佐野さんはこの後、容易ならざることを言った。

「残念ながら、急性膵炎を発症したら、その後はお酒を断っていただくしかありません。アルコールが原因で急性膵炎を発症した人のうち、およそ半数は再発するといわれていて、そのほとんどが断酒できなかったのが原因ではないかとされています。しかも再発の80%は4年以内だったという報告もあります」(佐野さん)

断酒! これは酒飲みにとって、かなりショックな情報である。人生の喜びを失わないためにも、普段から酒量をコントロールして、膵臓を適宜休ませてあげたほうが良さそうだ。

佐野さんによると、「急性膵炎を繰り返すと、10%程度ではありますが、慢性膵炎に移行する人もいます」という。

慢性膵炎には、また違った怖さがある。長期にわたって進行すると次第に膵臓全体がカチカチに硬くなり、膵臓の機能が落ちていく。重篤化すると必ず糖尿病にもなり、症状を伴う場合は膵臓と小腸をつなぐ手術を行うなど、治療もハードなものになる。次回は慢性膵炎について、引き続き佐野さんにお話を伺っていこう。

(文 葉石かおり=エッセイスト・酒ジャーナリスト)

[日経Gooday2021年10月8日付記事を再構成]

佐野圭二さん
帝京大学医学部附属病院肝胆膵外科教授。1990年、東京大学医学部卒。2001年、東京大学肝胆膵外科助教。2004年、東京大学肝胆膵外科講師。2010年、帝京大学外科教授。日本外科学会・指導医、日本消化器外科学会・指導医、日本肝胆膵外科学会・高度技能指導医・理事。

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