極端な軌道の彗星、こうして見つけた

バーナーディネリ・バーンスタイン彗星の発見に大きく貢献したのは、チリのアタカマ砂漠にあるセロトロロ汎米天文台のブランコ望遠鏡に取り付けられた高感度デジタルカメラだった。

このカメラは彗星を探していたわけではない。宇宙の膨張を加速させる謎の力であるダークエネルギーの解明をめざす「ダークエネルギー・サーベイ」プロジェクトのために、13年から19年にかけて、南天の夜空の広い範囲を8万回も露光してデータを収集していたのだ。カメラが撮影した画像はダークエネルギー研究を一変させたが、未知の天体発見にも役に立ちそうだった。

バーナーディネリ氏は、ダークエネルギー・サーベイの画像を使って、海王星よりも遠い軌道を公転している未知の太陽系天体を見つけることを博士号研究の目標とした。しかし彼は、そこで難しい問題に直面した。個々の画像が大きすぎて、1枚の画像をフル解像度で表示しようとしたら275台もの高精細度テレビが必要になってしまうのだ。そこで彼は、数万枚の画像の中から数画素の大きさの光の点を探すことにした。

バーナーディネリ氏は、ダークエネルギー・サーベイの画像を検索して、遠方の星を背景にして移動する点を探し出すコンピューター・プログラムを開発。米フェルミ国立加速器研究所の約200台のコンピューターを使って半年がかりで膨大な量の計算を行い、既知の太陽系天体と軌道が一致しない新天体を817個リストアップした。バーナーディネリ氏とバーンスタイン氏はさらに、このリストを手作業でチェックし、プログラムが正しく機能していることを確認した。

彼らはそのとき、太陽から何兆キロも離れた場所で生まれたことを意味する極端な軌道をもつ、長周期彗星のような天体に気づいた。「干し草の山の中から1本の針を見つけ出すような難題でした」とバーンスタイン氏は言う。「けれども私たちはこの難題を解決し、うれしい成果を手にしたのです」

世界中が彗星に望遠鏡を向けた

太陽系の彗星や小惑星などの小天体の軌道に関する発見は米国にある小惑星センターで管理されている。バーナーディネリ氏とバーンスタイン氏は、この彗星のデータを小惑星センターに提出した。21年6月19日、同センターはこれが新発見の天体であることを確認し、その5日後には彗星であることも確認して、2人の名前をとって「バーナーディネリ・バーンスタイン彗星」と命名した。

彗星発見のニュースはすぐに広まり、数日後には、世界中の天文学者が望遠鏡を彗星に向けたり、この彗星の画像がほかにないかどうかアーカイブを探したりしはじめた。まもなく、古くは10年のデータにもこの彗星が隠れていたことが明らかになり、より高い精度で軌道を推定できるようになった。

また、発表から24時間もしないうちに、この彗星がまだ太陽から30億キロ以上離れているにもかかわらず、大量の塵(ちり)やガスを放出していてコマ(または尾)が見えていることを、複数の研究チームが確認した。

彗星は、太陽に接近して、凍りついていた化合物がその熱で昇華して気体になるまではあまり物質を放出しない。しかし、バーナーディネリ・バーンスタイン彗星は、海王星の軌道よりも遠い極寒の宇宙空間でも昇華しはじめる揮発性物質を豊富に含んでいるようだ。このことは、彗星が過去に内部太陽系であまり高温にさらされていなかったことを示している。つまりこの彗星は、非常に魅力的な、始原的な天体なのだ。

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