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予想を超えた使い方が広がる

ネコカップは料理やスイーツ作りにも使われるようになったが、発売当時は砂や土を詰め込む用途だけを想定していた。しかし発売後、SNSにはネコカップで作った料理やスイーツの画像が投稿されるようになった。ネコカップで作ったメニューを提供するレストランも出てきた。急いで食品衛生の規格検査に出すと、ホタテの貝殻が原因でチェックを通らなかった。体に害があるわけではないが、SNSで投稿を見つけるたびに、「食品に使用するのは非推奨」といった情報発信を行っていたという。

しかし食品に使用する需要があることは分かったので、食品衛生に対応した素材に仕様を変更することにした。リニューアル品は内側にカトラリーのマークを刻印することで食品に使えることを明示した。

ユーザーの動きを通じて森井氏が感じたのが、「ネコカップの可能性が、受け手の想像力を通じて広がっていく」ということだ。当初、森井氏はネコカップを遊びの道具として考えていたが、名児耶氏の言葉がきっかけでオブジェとしても考えるようになった。オブジェとしてのネコカップは、事情があって猫が飼えない人や、ペットロスの人の心にも寄り添ってくれた。「飼い猫を亡くした寂しさに、ネコカップが寄り添ってくれている」というメッセージを送ってくれた人もいた。ネコカップを料理に使うという発想も森井氏の中にはなかった。

そこでアッシュコンセプトはネコカップに関連したイベントを企画。20年8月には参加型SNSイベント「#コネコカップチャレンジ2020」を開催した。SNSを通じて、コネコカップを使用した画像を募集するという企画だ。その後も21年2月と8月に開催し、8月のイベントではネコカップも対象に含め、イベント名を「#ネコカップチャレンジ2021」に改めた。

「森井ユカ賞」と、アッシュコンセプトのショップの「KONCENT賞」の2種類があり、それぞれネコカップやコネコカップを使った料理の画像を募集する「ネコ料理部門」、食品以外の素材で猫を造形する「ネコ造形部門」、ネコカップやコネコカップと本物の猫を一緒に撮影する「ねこもいっしょ部門」の3部門を用意した。1回目のイベントと比較し、約3倍の投稿(約370件)があった。ネコカップやコネコカップで作ったゼリーやプリン、氷の画像など、夏らしく涼やかな作品が集まった。ネコカップの中に猫の抜け毛を詰めて固めることで人形を作るなど、森井氏やアッシュコンセプトの想像を超えた作品も多かった。

森井ユカ賞のねこもいっしょ部門の受賞作品。愛らしい白猫とネコカップ製の氷、背景には多くの猫グッズが

ネコカップは、人間同士のコミュニケーションツールとしても使えるという。森井氏はネコカップと一緒に国内や海外を旅行し、現地のビーチや雪原で猫を作ることが多い。すると「何をしているの?」と声を掛けられることがあった。言葉が通じない海外でも、一緒に猫を作るうちに打ち解け、楽しい時間を過ごせたという。

森井氏は、これからも猫に関連した商品を作り続けたいと話す。「現在は、自分の中にある新たなアイデアを熟成中で、22年の6月ごろを目安に発表したい」(森井氏)

(フリーライター 近藤彩音、写真提供 アッシュコンセプト)

[日経クロストレンド 2021年10月8日の記事を再構成]

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