スポーツ前のカフェイン摂取 持久力の維持に効果?
前回(「コーヒーのカフェインで脳が活性 1日3~4杯はOK」)は、認知症など脳の老化とコーヒーのカフェインとのかかわりについて見てきた。しかし、カフェインの力はそれだけではない。今回は、近年知見が積み重なってきたカフェインと運動パフォーマンスの関係について、武蔵大学基礎研究センター准教授でトレーニング科学を研究する森健一さんに話を伺った。
かつて「ドーピング指定」を受けていたカフェイン

「ここ3年ほどの間に、カフェイン摂取とスポーツパフォーマンスに関する研究が海外で一気に加速しています」と語る森さん。最近、カフェインが、スポーツとのかかわりで注目を浴びているという。
カフェインは、急性摂取により競技パフォーマンスを高めることが古くから知られ、かつては「ドーピング指定」を受けていたことをご存じの人も多いだろう。しかし、2004年以降は、ドーピング指定薬物からは外されたという。
「カフェインはコーヒーやお茶、チョコレートなど日常的に低用量が摂取されており、とらないことのほうが難しいこと、多くとりすぎるとかえって効果が上がらなくなるという知見も蓄積されたためです。その後、2018年に国際オリンピック委員会(IOC)が公表した栄養サプリメントの合意声明では、『適度なカフェインはパフォーマンスを改善するための十分~強力な科学的根拠を持つ成分』と評価され、海外の調査では、栄養サプリメントを利用するアスリートのうちカフェインなどの強壮剤を使用している人は52%を占めると報告されています」(森さん)。
欧州食品安全機関(EFSA)は、2011年にカフェインに以下のヘルスクレーム(機能性表示)を認めている。
持久運動パフォーマンス、持久力の向上(3mg/kg体重)、
運動中の主観的労作(疲労感)の軽減(4mg/kg)に貢献する
・カフェインは注意力、集中力の改善に寄与する(1食あたり75mg)
ちなみに、持久力の向上に役立つ「3mg/kg体重」というカフェイン量は、体重60kgの人なら180mg、つまり「コーヒー2杯分」に相当する。
「現在報告されているカフェインと競技パフォーマンスに関する研究を概観すると、カフェインは、持久的パフォーマンスおよび、筋力・筋パワーの持続に有益だと考えられます。競技前のカフェイン摂取によって競技後半においてもパフォーマンスを長く維持できる、疲労感が抑えられた、という報告が多いです」(森さん)
カフェインの働きをうまく生かすには
その働きは、やはりカフェインが「脳に到達する」ことが関わっているという。
「カフェインは脳のアデノシン受容体と結合することで交感神経を活性化し、アドレナリンの分泌を促進します。このとき注意力や意欲も向上し、疲労感が軽減され、競技の持続、パフォーマンス向上につながる可能性が示唆されています」(森さん)
アスリートではない私たちがカフェインの働きをうまく生かすにはどうすればいいのだろう。「カフェインには脂質利用を促進する働きもあるので ウオーキングの30分前くらいにコーヒーを飲んでおくと、カフェインの働きによって脂肪燃焼を高める働きが期待できそうです」(森さん)
一方で、森さんは注意も促す。「カフェインが作用する脳のアデノシン受容体は、本来は疲労感がたまったことを体に伝える働きを持っています。そのため、アスリートがカフェイン摂取により疲労をごまかして過度に運動をしてしまうと、故障リスクが上がったり翌日の疲労感が高くなったりする可能性があるため、さらに検証をする必要があるでしょう」(森さん)
森さんは、コロナ禍で運動不足になりがちな今こそ、コーヒーをうまく運動のモチベーション維持に活用することを勧める。「カフェインは意欲を向上するアドレナリンの分泌を促進します。このとき運動をプラスすると、脳や全身の血流も良くなり、脂肪燃焼にもプラスに働き、心地よい疲労感で睡眠の質も良くなっていきます」(森さん)
とはいえ、運動は面倒と思う人も少なくないだろう。まずは手軽に始められるウオーキングくらいから入るといいかもしれない。
「ウオーキングが面倒という人は、近所で新しい店を1つ見つけよう、と遊びの要素をプラスしたり、誰かを誘っておしゃべりしながら歩いたりすると継続しやすくなると思います」と森さんはアドバイスする。
◇ ◇ ◇
ここまでカフェインと運動パフォーマンスの関係について見てきたが、いかがだっただろうか。朝のコーヒーだけでなく、日中の気分転換や運動のモチベーション維持にコーヒーをうまく利用しながら、やる気や活動性を高めていこう。
(ライター 柳本操)

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