一貫したテーマで人気獲得
しかしオープン当初は、YouTubeのチャンネル登録者数や再生数は思ったほど振るわなかった。それでも、独創的な組み合わせによるコラボと、「6畳半ポップス」というコンセプトを貫いた。

4月に、YouTubeを中心に活躍するラッパーの堂村璃羽や、変態紳士クラブのGeGらによって、ヒップホップから6畳半ポップスにアプローチした『いえない』を発表。6月には、元ぼくのりりっくのぼうよみとして活躍した、たなかと、人気の歌い手でDUSTCELLのボーカルを務めるEMAによるキラキラしたポップチューン『ダンス・ダンス・ダダ』など、音楽ファンがワクワクする組み合わせで約1カ月に1曲のペースでリリース。ミュージックビデオに使われるイラストも、一貫してNAKAKI PANTZが手掛けるなど、ブランドカラーの統一を図り続けた。
「始めたばかりの頃は、思うような数字が出ずに心が折れそうになりましたが、『誰か1人の曲であればいい』というコンセプトは求められていると信じて、楽曲をリリースし続けたことが結果につながったのかなと。『ヨワネハキ』でチャンネル登録数が1万人になり、その後の6月に出した『ダンス・ダンス・ダダ』の初動がそれまでの3倍に跳ねた。これはいけると手応えを感じました」
“すでに存在している部屋の住人への、だれかからの返信”という名目で、リミックスプロジェクト「Re:シリーズ」も始動。10月に『ダンス・ダンス・ダダ』、12月に『ヨワネハキ』を公開。後者は、Rin音などを手掛けるTaro Ishidaがリミックスを担当するなど、注目のトラックメーカーもMAISONdesに集まってきている。また11月にリリースした、meiyoとPiiによる『ラリー、ラリー』では、入居したアーティストにある仕掛けを施したそうだ。
「TikTokから人気に火がついたmeiyoさんとコラボレーションしたPiiさんは、まだ素性が明かされてない女性アーティストなんです。年明けには彼女の正体に少し近づけるコンテンツが出るのかも……(笑)。このようにいろんな角度から楽しんでもらえる施策を今後も取り入れていきたいです」
今後は、現プロジェクトとは別に、過去曲に着目したMAISONdes「B棟」というプランもあるという。「あまり知られていない過去の名曲を掘り起こし、それを若手アーティストに歌ってもらうみたいなことも考えています」
アーティストの多様な魅力を引き出しながら、多方向へと広がるポテンシャルを存分に秘めたMAISONdes。22年もこのアパートから世間を騒がす歌が生まれそうだ。



関西出身の音楽プロデューサーで、2017年より活動する3人組の音楽ユニット変態紳士クラブのメンバーでもある。自身が代表を務める音楽レーベル「Goosebumps Music」も立ち上げるなど、マルチな音楽人として幅広く活動中。
たなか マルチな才能を発揮
1998年生まれ。2019年1月末で前職・ぼくのりりっくのぼうよみを辞職し、たなかに改名した。音楽プロデューサーやアーティストとしての活動のほか、俳優、実業家、文筆家などマルチな活躍を見せている。
EMA 力強くも愛らしい歌声のシンガー
歌い手として音楽活動をスタートし、2019年にボカロPのMisumiと音楽ユニットDUSTCELL(ダストセル)を結成。凛としたしなやかな強さとキュートさを兼ね備えたボーカルで魅了している。21年10月には2ndアルバム『自白』をリリース。
(ライター 橘川有子)
[日経エンタテインメント! 2022年2月号の記事を再構成]