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アルコールの代謝経路には大きく2つあり、1つは「アルコール脱水素酵素(ADH1B)」と「アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)」によるもの、そしてもう1つは薬などの代謝で使われる「MEOS(ミクロゾーム・エタノール酸化酵素系)」という酵素群によるものだ(後ほど解説)。アセトアルデヒドの分解が遅い体質の人は、遺伝的にアルデヒド脱水素酵素の働きが悪くなっていることが多い。

「アルコールが代謝されてできた酢酸は、アセチルCoA(補酵素A)に変換されます。アセチルCoAは重要な物質で、これからATP(アデノシン三リン酸)が生成され、体の中でエネルギー源として利用されます。ATPから産出されるエネルギーを使って私たちの体は生命を維持しているのです」(浅部さん)

アルコールの代謝経路

アルコールが代謝されてできた物質がすべてエネルギー源として使われるのであれば問題ないのだが、実際にはそうではない。

「大量にお酒を飲むと、余ったアセチルCoAは脂肪酸を経て中性脂肪に変えられ、肝臓をはじめ、皮下や内臓に蓄えられます。お酒好きの多くが悩む中性脂肪過多は、これが主な原因です。お酒を飲む際、油っこいものをおつまみにすると、より体内の脂肪酸が増え、中性脂肪の増加につながるので注意が必要です」(浅部さん)

酒を飲むと強くなるのはもう1つの代謝経路のおかげ

アルコールが分解されてできたアセチルCoAが、にっくき中性脂肪の原因になるとは……。コロナ禍になってから受けた健診でちょっと上がった中性脂肪の数値がうらめしい。浅部さんは「内臓にたまった中性脂肪は、脳梗塞や動脈硬化、肝臓がんなどのリスクを高めるので甘く見てはいけません」と注意を促す。ああ、耳が痛い。

先ほど挙げたアルコールの代謝経路の1つ、MEOSについて浅部さんに詳しく聞いてみた。

「本来、MEOSによる代謝経路は、薬などをはじめとする“異物”を分解するものです。MEOSは肝臓に多くある酵素群で、薬だけではなくエタノールにも作用し、アルコールの常飲によって働きが強まります。多種あるMEOSの中でも、特にCYP2E1がエタノールを分解する酵素として知られています。実は昨今の研究で、CYP2E1によって代謝された際にできる活性酸素が、アルコール性の肝障害を引き起こすのではないかと考えられるようになりました」(浅部さん)

活性酸素は、過剰になると老化やがん、生活習慣病にもつながると考えられている。アルコールが原因のさまざまな疾患は、この過剰な活性酸素による細胞障害が引き起こすのではないか、という説もあるようだ。

「お酒が弱かった人が飲み続けるうちに強くなるのは、薬などを代謝するMEOSの酵素が誘導されて、アルコールの代謝に使われるようになるからです。日ごろからよくお酒を飲む人は、CYP2E1だけでなく、より多くの物質の代謝に関わるCYP3A4を含めたMEOSの酵素が多く誘導されているため、薬の作用にも影響すると言われています。薬が効きにくくなったり、反対に効きすぎたりすることがあるのです」(浅部さん)

酒飲みであれば、「大酒飲みには薬が効かない」という話を一度は耳にしたことがあるだろう。薬の説明書に「服用の際、アルコールは控えてください」と書いてあるのは伊達ではない。多くの薬は肝臓で代謝されるので、酒と薬を一緒に飲むと競合が発生し、酵素の取り合いになってしまうこともあるのだ。

「似たような話はグレープフルーツにもありますね。グレープフルーツに含まれる成分がMEOS(特にCYP3A4)の酵素の働きを一部阻害し、降圧薬などの作用を強めてしまうというものです」(浅部さん)

健康なうちは薬にお世話になることはないかもしれないが、何かの疾患を抱えた場合、定期的に薬を飲む生活になる。その際、酒と薬を一緒に飲むのはもってのほかだが、薬の効果を弱め(あるいは強め)ないよう、アルコールの大量摂取にも注意したほうが賢明だ。

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血中アルコール濃度をゆっくり上げれば悪酔いしない