
ペンギンたちがすむ島のグアノは、数百年かけて約10メートルまで堆積していた。断熱性が高く、外の天気から巣を守ってくれていたが、1800年代半ばに有機肥料としての注目が集まると、島のグアノはほとんど採りつくされてしまった。
ペンギンはさらに、エサ場を通る船の増加、営巣地での人間の往来、鳥インフルエンザやその他の病気、原油流出、アザラシやサメといった天敵による脅威にもさらされている。

新たな取り組み
気候変動により、異常気象は今後さらに増えると予測される。高潮や猛暑によって、沿岸のペンギンたちは営巣地を失う恐れがある。ビーチにある浅い巣は、太陽や熱にさらされたり、波にさらわれたり、カモメに狙われることもある。
たとえば2002年秋には、激しい嵐と大潮が重なって、フォクシービーチの繁殖地は壊滅状態に追い込まれた。ケープタウン大学鳥類統計局の研究者が翌朝ビーチを訪れてみると、多くの巣が水につかり、卵は流され、低体温症や溺れて死んだ子ペンギンの死骸が散乱していた。

現在、サイモンズタウン・コロニーの繁殖を助けるため、より丈夫な人工の巣を作る実験が行われ、リハビリテーションセンターで保護されていたペンギンを保護区へ戻す取り組みも進められている。

一方、漁網の糸が脚に巻き付いて保護されたフォクシービーチのペンギンは、無事に糸を取り除かれて快方に向かっていた。SANCCOBの獣医であるデビッド・ロバーツ氏は、処置があと数日遅れていたら安楽死させなければならなかっただろうと話す。
脚を切断するとしたら、根元にかなり近い部分を切る必要があり、そうなっては野生で生存できる見込みはほとんどないためだ。
それから1週間後、ペンギンはリハビリ用のケージを出てセンターのプールまでよたよたと歩き、仲間と一緒に遊んでいる姿が見られた。春にはフォクシービーチへ戻す予定だという。

(文 LEONIE JOUBERT、写真 MELANIE WENGER、訳 ルーバー荒井ハンナ、日経ナショナル ジオグラフィック社)
[ナショナル ジオグラフィック 日本版サイト 2021年11月13日付]