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ボカロ作品は20代でも大人気

VOCALOIDやボーカリストを起用して動画サイトで楽曲を発表しているボカロPたちによるリリース曲の人気も顕著だ。

4位のKanaria「KING」、7位のバルーン「シャルル」、11位のDECO*27「ヴァンパイア」、15位のChinozo「グッバイ宣言」、そして16位のてにをはfeat.flower「ヴィラン」と5作がランクインしており、いずれも総合ランキングに比べて少なくとも9ランク以上高くなっている。シャルルがヒットし始めた10年代後半、こうしたボカロPによる人気曲は10代からの支持が集中していたが、20年代となって20代にも広がっていることが分かる。

面白いのは、1995年生まれで実際20代半ばのあいみょんの楽曲だ。総合ランキングでは7位「マリーゴールド」、9位「裸の心」の2作がランクインしているが、20代ではいずれもトップ20圏外。その代わり、30代以上の幅広い年代で人気となるという、一見変わった現象が起きている。彼女がスピッツや浜田省吾など上の年代のアーティストに影響を受けていることから、詞の共感度やメロディーの歌いやすさなどは、むしろ上の世代に響いているのかもしれない。

このように、20代のカラオケ人気曲は、ボカロPとのコラボに積極的なAdoや、メンバーのAyase自身もボカロPだったYOASOBIも含めると、動画系アーティストが過半数となっている。SNSや“ひとりカラオケ”との相性の良さを考えると、この傾向はますます強くなるだろう。

臼井孝
 1968年生まれ。理系人生から急転し、音楽マーケッターとして音楽市場分析のほか、各媒体でのヒット解説、ラジオ出演、配信サイトの選曲(プレイリスト【おとラボ】)を手がける。音楽を“聴く/聴かない”“買う/買わない”の境界を読み解くのが趣味。著書に「記録と記憶で読み解くJ-POPヒット列伝」(いそっぷ社)。渋谷のラジオにてレギュラー番組『渋谷のザ・ベストテン』放送中。 Twitter @t2umusic