
日照時間が短く、寒さが厳しく感じられる今の時期。街中でも、黒などの暗い色で装う人が目立つ。とはいえ、ネイビーや黒といった無難で着回しがきくアイテムを中心としたコーディネートは、結果的に“重たい”感じになりがち。おしゃれで大人っぽいコーデを完成するには、どんな色をどのように取り入れればいいのだろうか。今、手に入れておきたい一着とは? 色味に特徴のある“色物”を生かす着こなしについて、横浜市都筑区にあるEuphonica(ユーフォニカ)の店主、井本征志さんに聞いた。
気になる色を素直に着る 計算しすぎないコーデ
――普段から色物を着るのですか?
「よく着ています。といっても若い頃に黒い服ばかりを着ていた反動で、何かを計算して取り入れて、ということはあまりないですね(笑)。ただ、ダークトーンの服ばかりだと暗い印象を与えがちなのは事実です。色もののアイテムがあると着こなしの幅が広がるとも思います」
――まず手に入れておくべき色はなんですか?
「正直に言うと、正解はありません。世間ではパーソナルカラー診断や骨格診断といった情報があふれていますが、持論としては人がとやかく言うことではないと思うんです(笑)。もちろん一つの目安にするのはいいですが、全員が従う必要はない。その時々で自分がいいと思った色を着ればいいと思いますね」

――お気に入りのアイテムはありますか?
「最近は紫のセーターですね。ネイビーやグレーなど、大体の色と相性がいいんですよ」
――セーターにも、ハイゲージ(編み目の細かいもの)やローゲージ(編み目の粗いもの)など、色々な種類があります。特におすすめはありますか?
「今、手に入れるならハイゲージでシルク素材のものですね。温度調節にちょうどいいアイテムで、寒い日に着ると適度に暖かくて、暖かい日に着るとひんやりとして心地いいんです。実は機能的な素材なので、春先ぐらいまで着用できますよ」
――ほかにおすすめのアイテムは?
「変化球ですが、コートで色物を取り入れてもいいと思うんです。例えば上品なグリーンのPコート。冬は暗い色の服を手にしがちなので、2着目や3着目に、アクセントとして手に入れておくと便利ですよ」
大人の冬服 “かっこよすぎる”のは…
――色物のアイテムを取り入れるとき、特に意識することは?
「黒のアウターと合わせる際には気をつけますね。というのも、色もののアイテムをインナーにしたときに、色のコントラストが強くなりすぎてしまうんです。その場合は黒を使った柄のマフラーを巻くなどして、バランスをとるようにします」
――色のコントラストが強いのは駄目なんですか?
「例えば、紫や赤のセーターの場合、なんだかドラキュラや夜の蝶(ちょう)みたいな見え方になるんです。もちろんそれが100%駄目だとは思いません。ただ、僕としては“かっこよすぎる”と思ってしまいます。『おしゃれしよう』という気持ちが透けているような気がして、少し照れくさいじゃないですか(笑)。それよりも地に足がついた感じの着こなしの方が好みですね」


――他にコーディネート全体で気をつけていることはありますか?
「生地や服の状態にはこだわるようにしています。僕は今40代ですが、肌のハリやツヤが少なくなって、髪もパサパサになって……。つまり加齢とともに自然と清潔感が失われていくんです(笑)。そうなってくると、例えば古着のジーンズは似合わなくなるんです。僕も服もエイジングされた状態ですから(笑)。そういった意味で、大人の男性は“ちゃんとしすぎ”くらいの、いい素材を選んだ方がいいと思います」

THE NIKKEI MAGAZINE 4月誕生!
Men's Fashionはこの4月、あらゆるビジネスパーソンに上質なライフスタイルを提案するメディア「THE NIKKEI MAGAZINE」に生まれ変わります。限定イベントなどを提供する会員組織「THE NIKKEI MAGAZINE CLUB」も発足します。先行登録はこちら