
ディワリ(ディーワーリーとも)は、インドで最も重要な祭りのひとつだ。闇に対する光の勝利、無知に対する知識の勝利、悪に対する善の勝利を、インドのみならず世界中で、10億人以上が宗教の違いを超えて祝う。人々は5日間にわたって、祈りをささげ、ごちそうを食べ、花火を楽しみ、家族で集まり、さまざまな善行を積む。そして一部の人にとっては新年の始まりでもある。
ディワリは「光の祭典」として広く知られている。ディワリの語源はサンスクリット語で「光の列」を意味するディーパーバリー(depavali)に由来する。祭りの間、火をともした素焼きのランプを人々が家の外に並べる光景が有名だ。
祭りの日程は、月が地球を一周する周期を1カ月とするヒンドゥー暦を基に決まる。ディワリが始まるのは7番目の月「アスヴィナ」と8番目の月「カルディカ」の間の新月の直前で、グレゴリオ暦ではおおむね10月から11月の間にあたる。2022年のディワリは10月22日に始まり、24日にクライマックスを迎える。
ディワリにまつわる多くの伝説
ディワリは、ヒンドゥー教徒の祝祭であるのはもちろんだが、ジャイナ教徒やシク教徒にとっての祭りでもある。祭りにまつわる言い伝えは宗教によってさまざまだが、最終的に「悪に対する善の勝利」を語っている点は共通している。
ヒンドゥー教の始まりは紀元前2000年紀までさかのぼる。ヒンドゥー教のなかでも、ディワリにまつわる物語は地域によって、いくつかのバージョンがある。しかしヒンドゥー教の神ヴィシュヌの化身とされる男たちの勝利を語る叙事詩的な物語であることに変わりはない。ヴィシュヌ神は宇宙を維持する神で、もめごとが起きた際、善と悪の調和を取り戻す役割を担っている。
インド北部では、ディワリは、継母によって14年間国を追われたラマ王子が、女神ラクシュミーの化身であり、敵国のラワーナ王に拉致された妻のシーター妃を救出し、故郷アヨーディヤーに凱旋したことを祝う祭りだ。
一方、インド南部では、1万6000人の女性を宮殿内に監禁し、刃向かう者を厳罰に処した悪徳王ナラカースラを打ち破ったクリシュナーを称(たた)える祭りであり、そして西部では、神々にとって脅威となったバリ王を地下世界に追放したヴィシュヌ神を称える祭りだ。
インドでは少数派であるジャイナ教徒やシク教徒、仏教徒もそれぞれ独自の物語を持っている。シク教は15世紀末にヒンドゥー教から派生した宗教で、特にヴィシュヌ神をあつく信仰する。シク教徒にとって、ディワリは17世紀、ムガール帝国皇帝ジャハーンギールによって12年間監禁されたグル・ハルゴービンドの解放を祝う祭りだ。