「三冠王もシーズン56号も、そこを目標に据えて挑戦してきました。今シーズンは60号もいけるのでは、と周囲に言われましたが、結局は達成できませんでした。なので来年はこれを目指して、もう一度三冠王を取りたいと思います」。プロ野球史上にさん然と輝く金字塔を打ち立てながら、早くもその目は来シーズンに向かっている。根っからのチャレンジャーであり、野球小僧なのだ。「だって野球が好きですから。寝る時以外は常に野球のことを考えていますよ。どうやったらこのピッチャーから打てるのか、とかね。ほぼ人生のすべてを野球にささげています」

熊本地震で「普通に野球」のありがたさを知る
出身は熊本県。3人兄弟の真ん中で、兄の影響で幼稚園児のころから野球に親しみ、小学生になって本格的にのめり込んだ。子供のころから文字通りの負けず嫌い。友達とゲームの類いはしなかったというが、それも負けるのがとにかく嫌だったからとか。地元の九州学院高校に進学すると、まもなく主軸打者となり、高校球児としては桁違いの長打力で周囲を圧倒した。守備では扇の要である捕手として投手をリードし、配球の勘所を学んだ。
大きな転機となったのは、高校2年の時に体験した最大震度7の熊本地震だ。街の象徴である熊本城が大きな被害を受けたのを目の当たりにし、普通に野球ができることのありがたさを痛感した。高3で主将になると、部の伝統である主将・副主将によるグラウンドのトイレ掃除を黙々とこなした。結局、甲子園に出場できたのは高1の一度だけだったが、3年間の高校生活では、打撃術だけでなく、リーダーシップと人間性も磨いた。

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