大事なことは幼児期に習っている

今日から役に立つ「技術」を紹介する同書に対し、『働く君に贈る25の言葉』は、どう働き、どう生きるかを問いかける人生哲学の本だ。著者の佐々木常夫氏は、自閉症の長男を含む3人の子どもと、肝臓病やうつ病を患う妻の世話をしながら、勤務先の東レで数々の事業を成功させ、同社の取締役や東レ経営研究所社長を歴任した。同書では、苦難を乗り越えてきた人生を振り返りながら、20代、30代の若手ビジネスパーソン向けに、仕事の心構えや幸せを手にする生き方について語っている。

「学生から社会人になるというのはものすごい環境変化です。特に入社して半年を過ぎた頃から、仕事で失敗したり上司とうまくコミュニケーションできなかったりで、モヤモヤを抱える人が増えてくる。ですからこの本は年末年始の時期に全員に配るようにしています」

配布は川島さんが人材開発部の担当部長になった3年前から始めた。川島さんが課長時代に佐々木氏の講演を聞いたのをきっかけに著書を読むようになり、仕事の流儀や人生に対する考え方に深い共感を覚えたという。

「特にこの本には『本当のこと』が書かれていると思います。たとえば『仕事で大切なことはすべて幼い時に学んでいる』という箇所では、きちんと挨拶をするとか、仲間はずれをしない、嘘をつかない、間違ったら勇気を持って謝るなど幼い時に教えられたことを、実は多くの社会人がおろそかにしていて、だから仕事がうまくいかないのだと指摘しています。自分自身や周りを見ても、確かにそうだなと思うわけです。『プアなイノベーションより、優れたイミテーションを』の項目では、いきなりすごい成果を出そうと力むよりも、できる先輩のまねを続けた先に自分独自のやり方という『イノベーション』が生まれると説いています。これも本当に納得で、ぜひこういう基本姿勢を若いうちに学んでほしいと思いました」

入社4年目の齊藤瑞穂さんは、異動して本を読み返したときにも新たな発見があったと話す。

最近の就活生や若手ビジネスパーソンは「早く成長したい」「早くスキルをつけたい」が口癖だ。だが、一般社団法人日本能率協会(東京・港)が部下を育成する管理者を対象に実施したアンケートでは、新入社員に対して期待することの上位には「コミュニケーション能力」や「素直さ」「ビジネスマナー」といった項目が並ぶ。

「そんなマナーよりも、手っ取り早くスキルを教えてもらって、成長したいというのが新人の本音でしょう。そこに上司の認識との大きなギャップがあるわけですが、やはりこの本に書かれているように、人としての基本的なマナーや地道に学ぶ姿勢が身についているほうが、実際にはたくさん教えてもらえる。結果的には早く仕事を覚えられるのです」

入社4年目の齊藤瑞穂さん(26) も社会人になった当初は「早く仕事ができるようになりたい」と焦っていたが、この本の内容がすっと心に馴染み、気持ちが落ち着いたと振り返る。入社2年目の秋に営業の現場実習から現在の収益管理の部署に異動した際、同書を読み返し、新たな発見もあったという。

「営業実習のときは『タイムマネジメントの本質は、事の軽重を知ることだ』とか『すぐに走り出さずにまず考えなさい』という箇所が心に刺さったのですが、2度目に読んだ時は『書くと覚える、覚えると使う、使うと身に付く』とか『せっかく失敗したんだ、生かさなきゃ損だ』といった言葉がグッときました。当たり前のことなんですが、なかなかできてないなと。特にいまの部署は、ちょっとしたミスが周囲に与える影響が大きいので、注意深く業務にあたっているのですが、本の中では『大人の世界ではよほどのことがない限り、厳しい指摘はされないのだから、もし指摘を受けたら感謝すること。そしてミスを繰り返さないことが最大の感謝の示し方だ』とあって、なるほどと納得しました。読むタイミングによって、何度も気づきを得られる本だと思います」

川島さんは2冊の本に共通するのは「急がば回れ」の精神だという。早く成長したいと望むのなら、基本的な心構えやPDCAを回す技術をまず押さえることが早道のようだ。

(ライター 石臥薫子)

科学的にラクして達成する技術

著者 : 永谷 研一
出版 : クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
価格 : 1,628 円(税込み)

働く君に贈る25の言葉

著者 : 佐々木 常夫
出版 : WAVE出版
価格 : 1,093 円(税込み)