好循環ループとは現状を客観的に観察(Observe)し、現状の問題(すなわち、悪循環ループ)に陥っている状況を判断(Orient)します。そこで、どのようにすると悪循環ループから抜け出し、人生の目的に向かえるかの意思決定(Decision)を行い、実際に行動(Action)に移します。そこで生じるさまざまな変化について観察していきます。この好循環ループは、それぞれの頭文字を取って「OODAループ」と呼ばれています。しかし、OODAループを当たり前のように使いこなすには自主練習が欠かせません。

例えば、不眠で悩む人は、不眠恐怖の影響から、できるだけ寝床にいた方が身体が休まるし、睡眠時間も確保できると思っています。しかし、真実はその反対で、寝床に入っている時間は実際の睡眠時間程度にした方が質の良い睡眠が得られるのです(「不眠症は睡眠薬に頼りすぎず 悪循環のくせを好循環に」参照)。一方で、「眠れないのに寝床に入って我慢する」となると、「それで眠れなかったら、さらにひどくなる」という考えと不安感が強くなり、なかなか実行に移すのが難しい方法でもあります。まさに「行くも地獄、戻るも地獄」といった感じです。そんなときには、「客観的な観察」のことすら忘れてしまい、悪循環ループから抜け出せなくなってしまい、どんどん自分を追い詰めてしまうでしょう。

睡眠の好循環を生む仕掛け作りを

そこで、まずは、OODAループを思い出す仕掛けづくりをお勧めします。外出中、寝る前、寝室など、異なる環境にいてもOODAループを思い出すため、普段、皆さんがよく見ている物を特定しましょう。例えば、外出中であればスマートフォンや手帳、寝室であれば置き時計などが該当するかもしれません。

次にそれらのアイテムに「客観的な観察」を思い出せるヒント(例えば「タケコプター」とか「達観」など)を結びつけます。一例として、紙にヒントを書き、スマホならそのヒントを写真で撮って待ち受け画面に設定するとか、置き時計ならその紙を貼り付けるとかいった具合です。いつでも目につくような仕掛けの完成です。

常に好循環ループでいられることは望ましいことではありますが、何が起こるか分からないのが人生の醍醐味でもあります。まずは「客観的な観察」の獲得を目指し、自主練習に励んでみてはいかがでしょうか?

客観的な観察の回答例

「全然寝つけない……」→「全然寝つけない」という考えが浮かんでいるなぁ。

「あす、大事な商談があるのに!」→「あす、大事な商談がある」と考えて心配になっているぞ。

「頭が痛い……」→「頭が痛い」と感じているわ。

「きょうも眠れなかったらどうしよう」→「きょうも眠れなかったらどうしよう」という考えが浮かんで不安になっているなぁ。

岡島 義(おかじま・いさ) 
東京家政大人文学部心理カウンセリング学科(睡眠行動科学研究室) 准教授。博士(臨床心理学)。日大文理学部卒、北海道医療大大学院博士課程修了。早大人間科学学術院助教などを経て2018年より現職。毎日8~9時間睡眠をとると快調だと気づき、夜9時に寝て朝5時ごろ起きる生活を続けている。

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