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タリバン支配のアフガニスタン ある家族の今の暮らし

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ナショナルジオグラフィック日本版

2021年8月、アフガニスタンで20年続いた戦争は終結に近づいていた。タリバンがファイザバードの町にやってきた夜、71歳のハフィザ・オマリさんは眠りにつくことができず、中庭を行ったり来たりしながら、神と対話した。

「戦争があると考えただけで、大きなストレスでした」と、ハフィザさんは言う。「しかも最悪なことに、息子たちが互いに敵となって戦っていたんです」。取材を受けるハフィザさんの周囲を、孫たちが取り囲んでいた。孫は何人かと聞かれると、数えられないと答えた。

タリバンは2021年8月11日に、ハフィザさんが暮らすファイザバードの町を制圧し、その4日後には首都カブールへ到達した。20年間タリバンを倒すために戦ってきた米国ほか多国籍軍諸国は、あっという間の出来事に衝撃を受けた。

戦争はアフガニスタンを分断させ、兄弟同士を対立させた。ハフィザさんの息子のうち、1人はタリバンに加わり、3人は米国の後ろ盾を受けた政府の兵士として戦った。

ある日、玄関の戸を開けたら息子の遺体が置かれているのではないか――ハフィザさんは何年も前からそんな恐怖と闘ってきたという。米ブラウン大学ワトソン研究所の推定によると、この戦争でアフガニスタンの治安部隊6万4000人以上、反政府軍の兵士5万2000人以上が命を落としたとされている。民間人も4万6000人が死亡し、負傷者も多数。そして多くの難民が生まれた。ハフィザさんは、2人の娘も病気で亡くしている。

タリバンがカブールの大統領府を掌握してから2週間後の2021年8月31日、米軍とNATO(北大西洋条約機構)軍はアフガニスタンを撤退し、米国史上最長の戦争に終止符が打たれた。米国防総省のデータを見ると、米国の死者は兵士と民間人合わせて2400人以上、連合軍兵士も、1100人以上が死亡した。

前線での戦いは1年前に終わったものの、アフガニスタンに平和が訪れたとは言い難い。今も数百万人が食料不足に直面し、特に女性や少女の人権は大きく損なわれた。

敵対した兄弟の再会

ファイザバードにあるハフィザさんの現在の住まいから北東へ車で3時間離れたパラング・ダラー村で、ハフィザさんの6人の子どものうち3人が朝食の準備をしていた。ハフィザさんはこの家で子どもたちを出産したが、戦争中にファイザバードへ移り、今はパラング・ダラー村を訪れることはほとんどない。車酔いするため、「ロバに乗ったほうがいい」と言うが、それではファイザバードからパラング・ダラーまで1日かかってしまう。

この夏、再会を果たした3人の息子たちは、新鮮なクリームとパンの皿を囲んだ。ハミドゥラー・ハミディさんがお茶を入れ、ヌールラー・アンワリさんとラフマヌラー・ナザリさんは、床に置かれたクッションにもたれてくつろぐ。このわずか1年前、3人は戦争によって引き裂かれていた。ハミドゥラーさんは親政府の民兵組織に、ラフマヌラーさんは政府の治安部隊に、そしてヌールラーさんは現在実権を握っているタリバンに属していた。

タリバン支配下での生活

ハミドゥラーさんは、仕事が必要だったから親政府軍に加わったというが、ラフマヌラーさんは、給料だけでなく、自由、民主主義、未来の繁栄のために戦ったと信じている。「男性も女性も享受できる自由がこの国で実現されるのを見たかったんです」

タリバンが実権を握ってから、アフガニスタンは人道的・経済的危機に陥り、報道の自由や教育を受ける自由は奪われた。それ以前から、アフガニスタンは女性にとって最も生きにくい国のひとつであると専門家から指摘されていたが、今や少女の中等教育を禁止している世界で唯一の国となった。タリバンは旧治安部隊の恩赦を宣言しているが、国連によるとこの1年間で旧治安部隊と旧政府関係者160人が違法に処刑され、さらに多くが違法に拘束されたという。

人権侵害の横行により、タリバンを正当な政府として認めた国はない。

危険な仕事

朝食の後、朝の散歩に出かけた兄弟たちは、金鉱へやってきた。ラフマヌラーさんとハミドゥラーさんは現在、ここで働いているという。山の頂上を目指す男たちとすれ違いざまに、握手を交わした。そのなかには、旧政府の諜報員(ちょうほういん)や、地元タリバンの戦闘員もいた。しかし今は、全員が同じ鉱山で肩を並べて働いている。

国連によると、タリバン復権後1カ月で50万人のアフガニスタン人が職を失ったという。また、助産師や教師など行政で働く100万人以上にも、何カ月も給料が支払われなかった。

「治安という観点からは、状況は落ち着き、改善していますが、国中に食料不足と飢えが蔓延(まんえん)しています。物価も上昇しました」と、9人の子どもを持つハミドゥラーさんは言う。

旧政府が崩壊し、ハミドゥラーさんも職を失い、生活が苦しくなった。1カ月前から金鉱で働くようになり、深さ15メートルの穴を掘ったが、今のところ何も収穫はない。鉱山での作業は危険なうえ、未経験者は自分で仕事をしながら覚えていくしかない。それでも家族を養うため、国中の失業者が鉱山に眠る幸運のかけらを求めて遠くからやってくる。

国際社会は、タリバン政権を助けることなく、国民を支援する方法を模索している。「イスラム首長国」と自称するタリバン政権は、非営利団体や国連機関による国内での活動を認めているが、しばしば、誰がどこでどのように支援を受けるかの決定にまで介入しようとする。

タリバン支配下での教育

タリバンに入る前、ヌールラーさんは教師をしていた。学校の校舎は、白いユニセフのテントだった。

戦争が終わったあと再び学校へ戻り、校長に就任した。教師は、自分にとって「夢の職業」だと語る。

「国に奉仕したいと思っています。悲しみと苦悩をもたらす戦争は良くないと、昔から思っていました。戦争によって幸せになることはあり得ません」

ヌールラーさんの学校では、男女570人の児童が学んでいる。ほかの公立学校同様、女児は6年生までしか授業を受けることができない。4人の娘を持つヌールラーさんはこの法律が理解できないというが、タリバン政権内では議論が継続中だと信じている。

家の外では、ハミドゥラーさんの長女で15歳になるハジーラさんが、年下のきょうだいやいとこの面倒を見ていた。彼女は、親と祖父母世代の平和の代償を支払わされている。

通っていた学校がタリバンによって閉鎖されたとき、ハジーラさんは10年生だった。それ以来、一度も学校へ行っていない。

タリバンの報道官は、7年生以上の女子の教育に反対しているわけではないが、その前にイスラム教の戒律に即した適切な条件を整える必要があると主張している。しかし、タリバンは20年以上前に国を支配していた時にも同じことを言っていた。1996年から2001年までのタリバン政権下で、事実上の女子教育禁止令が解かれたことは一度もない。

ハジーラさんは、自分が学校へ戻って教育を受けることがなぜタリバンにとって問題なのか理解できないと話す。学校が閉鎖されてから2人の親友が結婚し、それ以来、姿を見ていないという。

計画も目的も、友人もなく一日中家にいることは、大きな心理的負担になる。ハジーラさんは、自分の気分や性格が変わってしまったことに気づいた。

「学校が閉鎖されて以来、落ち込むと全てのものに対して当たりたくなります。小さな子どもに向かって声を上げたり、いらいらします。自分は何もできないのだと思うと、怒りがわいてきます」

将来の夢は仕立屋になることだが、自分も親友たちのように結婚して子どもを産み、家に入らなければならなくなるのだろうと予測する。ここでは、誰もがそうやって生きている。

ハジーラさんの祖母、ハフィザさんは静かに聞いている。孫には自分が受けられなかった基礎的な教育を受けてほしいと願っているが、タリバンが実権を握っている今、どうすることもできないと考えている。それでも、息子たちが敵対した戦争よりも平和のほうがいいという。

戦争が終結し、ハフィザさんは眠れるようになった。しかし、家族への不安は尽きない。

「何か食べただろうか? お天気はいいだろうか? いつもそれを心配しています。『もう心配しないでくれ』と言われます。でも、私はあの子たちの母親なのですから」

(文 NANNA MUUS STEFFENSEN、写真 KIANA HAYERI、訳 ルーバー荒井ハンナ、日経ナショナル ジオグラフィック)

[ナショナル ジオグラフィック 日本版サイト 2022年8月18日付]

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