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小林武彦著 講談社現代新書 990円(税込)

小林武彦著 講談社現代新書 990円(税込)

地球上に生命が生まれる確率は「25mプールに、分解した腕時計の部品を沈め、かき混ぜているうちに腕時計が完成して動きだす」くらい低い。私たちが生きているのは偶然(あるいは奇跡)が積み重なった結果だが、生物学者である著者によれば、生物の存在にも進化にも「なるほど」と思える理由があるという。

さまざまな生物の生き様と死に様を検証することでその理由に、特に「なぜ死ななければならないか」に、本書は迫る。あくまで科学的な視点から生きることの意味を導き出すアプローチが新鮮。時空両面で思い切り視野を広げると、死への恐れが薄らぐことに気づく。

要点1 多様性は予測不能な未来を生き抜く強さ

生物は遺伝子の変異により常に「変化」を繰り返し、多様な「試作品」を作ってきた。そのなかからたまたま環境に適したものが「選択」されることで、生命の連続性が保たれてきた。生物における多様性は、予測不能な未来を生き抜くための強さにほかならない。多様性重視のコンセプトは、多細胞生物の生殖の仕組みからも明らかだ。単に卵や精子を作るだけでなく、染色体の中身をシャッフルして可能な限りの多様性を生み出している。

そんな生命の成り立ちは、次代の子どもたちをどう教育すべきかを指し示す。大事なことは単一の尺度で評価するのではなく、遺伝的な多様性を生かし伸ばすこと。それでこそ、環境の変化を生き抜く力を育てることができる。

要点2 次世代のために死ななければならない

生物の多様性は、遺伝子の変異と種の絶滅によって支えられてきた。地球上の生物は過去5回、大量絶滅を経験した。哺乳類の時代になったのは約6650万年前、隕石(いんせき)の落下による環境の激変で恐竜などが絶滅したため。地上の支配者だった恐竜が消えたおかげでネズミに似た小型の生物が生き残り、やがて人類に進化した。

こうした容赦のない生物のリストラ、「作っては分解して作り替えるリサイクル」が進化を推し進め、いくつもの死が次代の生物に生命の素材を提供する。進化はある意味、老化し、死ぬ生き物を「選択」してきたのだ。いずれにしても、生物は次の世代のために死ななければならない。死を恐れる気持ちからは逃れられないが、それは、ヒトが他者に共感し絆を大切にする生き物であることの証しだ。

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