変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック

「データ」という言葉は幅広い範囲で使われる。多くの人が真っ先にイメージするのは、Excelなどの表計算ソフトに整理された数字ではないだろうか。だが、数行ほどの簡単な表組であっても、一目見ただけで瞬時に何かの知見を得られる人は少数のはずだ。

そこで行われるのが、データをわかりやすく、見やすく視覚的に表現する「データ可視化」だ。代表的なのは、おなじみの棒グラフや円グラフ、折線グラフなどの「グラフ」。3Dグラフィックやイラスト地図、アニメーションで数値や、数値の変化を可視化することもある。

直感的に理解や発見ができるデータ可視化だが、瞬時に読み取られることがあだとなり、誇張やだまし、意見誘導に使われることもある。例えば経年変化を表すグラフで、縦軸がゼロから始まっていなかったりする。10年で数値が100から110まで増えたというデータを折れ線グラフにした時に、起点を90にすれば、カーブの角度が大きくなり、「微増」を「急増」に見せることも可能なのだ。

本書『データ思考入門』では、こうしたデータ可視化に騙されないためのリテラシーを「データ思考」と名づけ、その身につけ方を解説する。データをいかに可視化し、どう提示するかという「作る側」の視点を学ぶことが最重要と説く。

著者の荻原和樹氏は1987年生まれ。東洋経済新報社でデータ可視化を活用した報道コンテンツの開発、デザイン、記事執筆に従事した後、スマートニュースメディア研究所を経て、2022年10月よりGoogle News Labティーチング・フェローとして報道機関や大学でデータの読み方や伝え方などのトレーニングを行っている。

絞り込み、メタファー、コンセプト

著者によると、データ可視化にあたっては、「どれだけ多くのデータを見せるか」よりも「データから得られる示唆や考察の総量の最大化」が優先される。網羅的に正確に細かい数字を可視化するのではなく、誰が使うのか、使う側の目的などに合わせて、まずデータを絞るべきだという。

その上で、数字の「メタファー」を考える。「そのデータが何を暗示しているか」「その数字から何がわかるか」といったことを、著者はメタファーと呼んでいる。例えば、新型コロナウイルス禍においては日々数字が発表されたが、地域ごとの感染者数というデータから「その地域で自分や知り合いが感染する危険性」を知ることができる。また、重症者数は「その地域の医療がどのくらい逼迫しているのか」を示唆する。これらがメタファーだ。

可視化を行う側がデータのメタファーを意識すれば、それをわからせるためにどう見せるかという方向性が定まる。それを著者は「コンセプト」と呼んでいる。データを伝える目的や、データを通して、ユーザー(データを受け取り、活用する人)に何をしてほしいのかを表すのが、コンセプトだ。

すなわちデータ可視化では、①データを絞り込む②メタファーを考える③コンセプトを設定する――という3ステップが大事ということだ。

新着記事

Follow Us
日経転職版日経ビジネススクールOFFICE PASSexcedo日経TEST

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック