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上司による部下のケアが滞ってしまう

デメリットその3:上司の労務管理やラインケアに支障が出やすい

リモートワークによって、育児や介護との両立がしやすくなったとメリットが強調されがちですが、逆に仕事中にプライベートな時間が紛れ込みやすくなり、労務管理に支障が出ているケースが散見されます。

例えばリモートワークに従事しているはずの時間中に、しばしば連絡がとれなくなり、人事が調査したところ子どものお迎えや家事を行っていたことが判明したケースがありました。

きちんとプライベート時間を申告している社員のケースでも、子どもを寝かしつけたあとに夜遅くから仕事を再開するために、周りの同僚との連携がうまくいかず仕事に支障が出てしまったケースもありました。

またウェブ会議中に頻繁に無反応となってしまう社員に事情を確かめてみたところ、睡眠障害の治療を中断して症状が悪化し、居眠りが頻発していたという事例や、リモートワーク中にアルコール依存症が悪化して、業務中にまで飲酒をするようになった、という事例の報告もあるようです。

このように出社していたら管理監督者にとって問題なくできていた社員の労務管理や健康関連のラインケアが、リモートワークによって非常にやりづらくなる例がしばしば発生しています。

出社とリモートの「ハイブリッド型」

筆者が見聞したケースを中心に、リモートワークのデメリットについてまとめてみました。

もちろんリモートワークにも「通勤時間が短縮できる」「嫌な人間関係と距離がとれる」「非効率な付き合い残業をしなくてよい」「子どもや介護の送迎がしやすい」などのメリットがありますから、完全に廃止する必要はないと思います。

業種や社員の年齢層、会社の規模にもよりますが、管理職や社員にアンケートをとったりヒアリングしたりしたうえで、今後は適度な出社を取り混ぜたハイブリッド型に移行していくのがよいのではないでしょうか?

社員の中には、「出社したほうがONとOFFの切り替えがうまくいく」「自宅が仕事のできる環境ではないので、出社のほうが仕事に集中しやすい」「一人暮らしなので一日中部屋にいると気が滅入るから出社して仕事をしたい」という人も相当数います。そういうタイプの人には、100%に近い出社を認めてあげるのもよいと思います。

筆者が担当する企業でも、感染対策重視のリモートワーク比率を見直し、社員のニーズや業務効率とのバランスを勘案しつつ、徐々に出社率を上げていく企業が増えています。

ぜひ管理職の意見や社員のニーズを調査したうえで、どちらの良いところも取り入れた柔軟なハイブリッド型を検討してみてください。

※筆者が本文で取り上げた事例は、実際にあった例から個人情報保護のため設定や内容を一部変更したものです

[日経Gooday2022年7月6日付記事を再構成]

奥田弘美氏
精神科医(精神保健指定医)・産業医(労働衛生コンサルタント)・株式会社朗らかLabo代表取締役。1992年山口大学医学部卒。精神科臨床とともに、都内約20社の産業医を兼務し、日々多数の老若男女の心身のヘルスケアを行っている。執筆活動も精力的に行っており、近著には『「会社がしんどい」をなくす本』(日経BP)、『心に折り合いをつけて うまいことやる習慣』『不安と折り合いをつけて うまいこと老いる生き方』(中村恒子氏との共著、すばる舎)などがある。

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