市場縮小を冷静にとらえる向きもある。ある業界関係者は「むしろ、これまでが異常だった。ボージョレ・ヌーボー市場の縮小は日本のワイン市場が成熟しつつある証しではないか」と見る。

「解禁パーティー」減り、歴史的使命終えた?

ボージョレ・ヌーボーは、カルボニック・マセレーションと呼ぶ独特の醸造方法に由来するバナナやキルシュのような香りが特徴で、その特徴ゆえに人によって好みが大きく分かれるワインだ。ワイン消費国としては目立たない日本が、ことボージョレ・ヌーボーに限っては世界最大の輸入国であり続けているのは、「初物」好きの日本人の習性に加え、小売業界がバレンタインデーやハロウィーンのように消費喚起キャンペーンを張って盛り上げてきたことが大きい。

そのおかげもあって日本のワイン市場は徐々に拡大してきたが、皮肉にも、ワイン文化のすそ野が広がり、多くの日本人にとってワインが特別なお酒でなくなるにつれて、消費者の間でボージョレ・ヌーボーへの関心は徐々に薄れていった。かつては、解禁日の真夜中になると、各地のホテルやレストランで派手な「解禁パーティー」が開かれていたが、そういったお祭りイベントは最近めっきりと減っている。ボージョレ・ヌーボーは、もはや歴史的な使命を終えたとも言える。

そう感じているのは日本人だけではなさそうだ。別の業界関係者によると、ボージョレワインのプロモーション機関「ボジョレーワイン委員会」の代表団が今夏、来日した際、日本の現状を知り、強い危機感を覚えたという。同委員会が9月に日本語の公式ホームページを立ち上げたのも、その危機感の現れと見られる。同委員会日本事務局が「ボジョレー・ヌーヴォーだけではない、ボジョレーワインの魅力をより身近に感じていただけるコンテンツとなっております」とアピールしていることからも、ヌーボー以外のボージョレワインを今後、日本に積極的に売り込もうとする意図が見える。

ボージョレといえば日本ではボージョレ・ヌーボーのイメージが強いが、世界的な銘醸地ブルゴーニュ地方の南隣に位置するボージョレ地方は近年、ブルゴーニュの影響を受けるなどして、ワインの品質が顕著に向上。ブルゴーニュワインと似た味わいや品質のワインも増えている。また、ボージョレには世界的人気が高まる「ナチュラルワイン」の生産者が多い。それらのワインは、ボージョレ・ヌーボーより値は張るが、飲むとボージョレのイメージがきっと大きく変わるはず。ぜひ試してみてほしいワインだ。

(ライター 猪瀬聖)

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