歴史つまったチョコレートドリンク 寒い日にもホッとイタリア美味の裏側(12) イタリア食文化文筆・翻訳家 中村浩子

「バンキーニ」のホットチョコレートドリンク「修道院のチョコラータカルダ」

古代ローマ時代の聖職者「ヴァレンティーノ」の名に由来するとされる2月14日のバレンタインデーにちなみ、今回はイタリアのチョコレートドリンクを紹介したい。

もともとチョコレートの原料であるカカオはスペイン人によってヨーロッパの宮廷にもたらされ、18世紀初めにブルジョワジーにまで広がったと言われる。ヨーロッパ各地でさまざまな工夫がほどこされ、チョコレートの製造技術が進んでいたイタリア北部トリノでは、寒さの厳しい冬にホットチョコレートドリンクを飲む習慣が根づいた。

そのトリノで18世紀に創業された「カフェ・アル・ビチェリン」のチョコレートドリンク「ビチェリン」は、今や日本でも東京や名古屋、大阪、福岡で展開するカフェ「ビチェリン」で楽しめるようになった。

「ビチェリン GINZA SIX店」のチョコレートドリンク「ビチェリン」。多店舗で展開し、価格は1100円。六本木ヒルズ店では紙コップでのテークアウト(770円)も

ビチェリンは、上から生クリーム、チョコレート、エスプレッソ(コーヒー)の三層からなる。トリノ本店のオーナーお勧めは、「まずはかき混ぜずにそのままで」飲むこと。

お勧めどおりに飲むと、五分立ての冷たい生クリームがまず口になめらかに流れこむ。そのあとにチョコレート、最後にエスプレッソの濃く苦い味が舌をひき締める。下に行くほど、濃く、温かくなる。日本の店舗でも、チョコレートはトリノの本店からとり寄せたカカオパウダーを使い、本店で受けつがれるレシピを忠実に守っている。同じくトリノから運びこんだ銅鍋で、ゆっくりと焦げつかないように火を入れていくという。本店から定期的に味のチェックも受けている。

トリノの「カフェ・アル・ビチェリン」の店内。菓子やチョコレートが売られる (写真提供 脇本道明氏)
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ゆったりとした気分でチョコレートドリンクを