ビールもワインも “都産都消”の酒と食を楽しむ3店

「和食器フレンチ Komorebi」の「都産野菜のニース風サラダ」

ワインや日本酒などの名醸地といえば、のどかな田園地帯や丘陵地帯などを想像する人が多いだろうが、最近、世界的に増えているのがアーバンブルワリーや都市型ワイナリーなどと称される、都会のど真ん中で醸造される酒。今回は東京都内で造られるワインやビール、日本酒を堪能できるユニークな3店を紹介する。

東京都産の食材を使ったフレンチを、練馬区産のワインで!

東京の西武鉄道新宿線、上石神井駅から徒歩5分の「和食器フレンチ Komorebi」(東京・練馬)は、地産地消の東京版、つまり“都産都消”をコンセプトに掲げるカジュアルフレンチレストラン。都内で生産された野菜や、東京ビーフなどの都内生産の肉(牛・豚・鶏)など、8割以上が都内で造られたものを使用している。

「この辺りは練馬大根がもともと有名で、練馬野菜だけを使用した店を考えていたのですが、年間通して種類豊富な野菜をそろえるために、東京都全体にまで枠を広げることになり、“都産都消”の店が完成しました」と語るのは、同店オーナーシェフの林和孝さん。

芸術的な和食器でいただく「東京野菜四重奏テリーヌ ミニラタトゥイユ添え」

都内の食材を探しているうちに、練馬区大泉学園にある都内初のワイナリー、東京ワイナリーのワインや、東京都青梅市にある小澤酒造の日本酒「澤乃井」などの存在に気づき、さっそく導入したという。欧州など海外ワインだけでボトル銘柄28種、グラス8種などもそろえるが、東京ワイナリーのワインは常時3~4種をラインアップ。

東京ワイナリーは女性がほぼ1人で切り盛りする小規模ワイナリーなので生産ロットは少なく、これだけそろえている店は都内でも珍しく、ワイン好きにとっては貴重な店となっている。

さっそく都産食材の料理と東京ワイナリーのワインを味わってみた。アラカルトのほかにコースはプリフィックス(3800円~)を用意しているが、取材時はちょうど「ダイナースクラブ フランスレストランウィーク2022」を開催中(10月16日まで)で、同店は参加店だったので、6500円が5000円になるイベントコースがあり、さっそくこれを予約した。

長崎県の波佐見焼の皿で提供された1品目、「東京野菜四重奏テリーヌ ミニラタトゥイユ添え」は、東京都江戸川区のコマツナ、八丈島のアシタバ、練馬区上石神井の秋ナス、西多摩郡日の出町のエダマメを使用。野菜ごとにそれぞれの味が濃く、素材を生かした調理法だからか歯ごたえがしっかりしている。ラタトゥイユの酸味がソーヴィニヨン・ブランのさわやかな白ワインに合う。

「東京諸島鮮魚のブイヤベース仕立て」は幕末時代のアンティーク皿で提供された

岐阜県の織部焼の皿で提供された2品目は、「都産野菜のニース風サラダ」。八丈島で捕られたマグロを低温調理でしっとりと軟らかい自家製ツナに仕上げ、都産の野菜と盛り合わせた。東京ワイナリーは無ろ過製法が特徴の1つで、白ワインはすっきりとしながらも、ふくよかな味わいが広がり、魚介のうま味とよく合う。

「野菜は朝採れにこだわっているので、例えばブロッコリーなら切った幹の部分から水がしたたり落ちてくるほど新鮮なんです」と林さん。そんなブロッコリーやズッキーニ、アスパラガス、そして八丈島のハチビキ(赤サバ)、ムール貝、アサリなどを使った「東京諸島鮮魚のブイヤベース仕立て」は、ボリュームたっぷりなのにヘルシー。やさしいうま味のスープがなくなるまで、最後までパンに吸わせて味わった。

練馬区産ワインを堪能できる店は、箸と和食器で気軽に味わう野菜たっぷりのビタミンフレンチが魅力で、女性客が8割というのもうなずけた。

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