「平和どぶろく兜町醸造所」はどぶろくを自家醸造するバー

とろ~り出来たてのどぶろく。黒豆や小豆、ホップのどぶろくまで!

最後はどぶろくを都内で醸造する店。22年6月、東京メトロ茅場町駅近くにオープンした「平和どぶろく兜町醸造所」(東京・中央)は、和歌山の日本酒蔵元、平和酒造が手がける醸造所&バー。同蔵元製造の人気日本酒「紀土」やクラフト生ビール6種が味わえるほか、店内で醸造した活性どぶろくなども提供している。

どぶろくとは、米・水・米麹(こうじ)を原料に発酵させ、醪(もろみ)を濾(こ)さない伝統的な製法の日本酒のこと。とろりと甘酒のような舌ざわりで、うま味が濃厚だ。同店では店内の一角に小規模な醸造室を設置しており、ホーロー鍋に原材料を入れて発酵させ、冷蔵保管しながら発酵具合を調整している。加熱処理をしない生どぶろくなので、味わいが少しずつ変化し、それも常連客の楽しみの一つになっている。

注文ごとにホーロー鍋からどぶろくを注ぐ。写真は小豆どぶろく

取材時の「本日のどぶろく」は3種(1杯550円)で、黒豆、小豆、そして珍しいホップどぶろくまであり驚いた。ビールも製造している企業だからこそできるどぶろくのホップ風味。黒豆と小豆のどぶろくは香ばしい穀物の香りが漂うのに比べ、ホップどぶろくは独特のアロマが広がり、全く新しい体験だ。

「平和どぶろくプレーン」はフルーティーだが、さっぱりしていて飲みやすい。どぶろくと言ってもざまざまな味わいがあるのだ。最初からどぶろくで乾杯するもよし。最初はビールで乾杯し、料理に合わせてどぶろくや日本酒などをチョイスするもよし。

店内はカウンターがメインで、お酒のことなどを気軽に質問できる

カウンター奥のタップ8本からは樽(たる)生ビールだけでなく、大吟醸の生酒や梅ワインなども注がれるというのもユニーク。料理は紀州特産のしょうゆをかけた自家製のゴマ豆腐や、サンショウをたっぷりかけたポテトチップスなど酒が進むつまみがラインアップ。シメには和歌山ラーメンまで用意されていた。

都内で醸造された酒は、生産量は多くはなく希少で、味もコンセプトも個性的なものが多かった。こだわり満載の酒が都内にはまだまだある。シルバーウイークは台風でなかなか出かけられなかったと後悔気味の方、食欲の秋を身近なところでも探索してみては。

(フードライター 古滝直実)

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