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ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回はいつもと趣向を変えて、定点観測している書店のビジネス書担当者に、夏休みに読んでおきたいビジネス・経済書をすすめてもらった。この夏は新型コロナウイルスの感染拡大も第7波が猛威を振るい、新規感染者数が増え続けている。外出制限こそないものの、旅行などを控えるビジネスパーソンも少なくないだろう。そんな時間を読書に振り向け、本を通してさまざまな知的刺激を受けてみてはいかがだろう。

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色あせぬロングセラー『失敗の本質』

今回は新刊にこだわらず、この夏読んでおくといい経済・ビジネス書をそれぞれ2冊選んでほしいと依頼した。答えてくれたのは、毎月訪れている定点観測書店3店と、2~3カ月に1度訪れる準定点観測書店2店の書店員だ。5人それぞれが異なる本を選択し、合わせて10冊になった。

「歴史的戦争の中から組織学としてメスを入れ、重なる失敗の本質をついていく。名著とうたわれるだけあって読み出すとページを繰る手が止まらない」。リブロ汐留シオサイト店の河又美予さんがそう言って推薦してくれたのは、組織論の立場から第2次世界大戦時の日本軍を実証的に分析した戸部良一・寺本義也・鎌田伸一・杉之尾孝生・村井友秀・野中郁次郎『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』(中公文庫)だ。経営学者の野中郁次郎氏をはじめ、組織論専攻の研究者と歴史研究者6人が集い共同研究したもので、原著の刊行は1984年、91年に文庫化され、75刷を重ねるロングセラーだ。

リブロ汐留シオサイト店の河又美予さんのおすすめは『失敗の本質』と『こうして社員は、やる気を失っていく』

リブロ汐留シオサイト店の河又美予さんのおすすめは『失敗の本質』と『こうして社員は、やる気を失っていく』

ロングセラーなだけに、すでに手に取った、1度は読んだという読者も多いだろう。だが、「大東亜戦争における諸作戦の失敗を、組織としての日本軍の失敗ととらえ直し、これを現代の組織にとっての教訓、あるいは反面教師として活用することが、本書の最も大きなねらいである」という著者たちの意図は、40年近くたった今でも色あせない。

ノモンハン、ガダルカナルなど6つの作戦の失敗を組織論の観点から分析、この事例研究をもとに失敗の本質を見定め、教訓を引き出していく。「日本のトップマネジメントの年齢は異常に高い。日本軍同様、過去の成功体験が上部構造を固定化し、学習棄却ができにくい組織になりつつあるのではないだろうか」。こんな指摘が古びていないのは驚くばかりだ。「平時は安定、非常時に弱い。失敗から責任逃れする体質……。そうならないためにコロナ禍で大きな変革期にある今こそ、改めて読んでほしい」と河又さんは話す。

一方、三省堂書店有楽町店の岡崎史子さんのおすすめは、この本を題材に著者の1人が自らの研究の軌跡を振り返った近刊だ。この5月に刊行された野中郁次郎「『失敗の本質』を語る」(日経プレミアシリーズ)で、「名著のエッセンスを今の視点から語り直してくれるので、より深く『失敗の本質』の今日的意義を考えることができる」と岡崎さんは言う。

長く経済学や経営学を取材してきた元新聞記者が聞き手を務め、戦史研究にとどまらない野中氏の組織論の広がりを巧みに整理し、「危機に直面した人と組織が進むべき道筋」を探っていく軌跡が描かれる。日本軍の失敗と対照的に成功の道を歩んだ米海兵隊の研究や知識創造理論へと発展していく同氏の研究史は、「今われわれは何をなすべきか」という本質的な問いを日本の企業人に突きつけているように思える。

リブロの河又さんのもう1冊のおすすめは、松岡保昌『こうして社員は、やる気を失っていく』(日本実業出版社)。5月刊の近刊で、「疲弊する組織や離職率の高い会社に共通する"あるある"と、その改善策」を紹介した本だ。著者は経営・人事・マーケティングのコンサルティング会社を起業した元リクルートの経営コンサルタント。「実話を元にしたケースと改善策もあげられているため、より理解しやすい。価値観や働き方が急激に変動している昨今、読んでおきたい一冊」とおすすめの理由を話す。『失敗の本質』と併せて、組織を見つめ直す本が並んだ。

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