――温暖化対策の議論はとても専門的です。NGOは政府目標や政策にコメントしたり、政策提言を公表したりしていますが、どのように情報を収集しているのですか。

「議論をリードしているのは、科学者を抱えた団体です。科学的知見に基づいた分析、提言でなければ説得力を伴わないからです。WWFのスタッフは全世界に7000人います。このうち私を含む約5400名はいわゆる自然保護の専門部署に所属していて、その多くが博士号や修士号を持つ専門家です。世界的な科学者も所属しており、例えば、2019年に国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表した『海洋・雪氷圏特別報告書』の共同執筆者を務めたマーティン・ソメルコン氏はWWFのノルウェーで働く専門家です」

――小西さんはどのようにして環境・エネルギーの専門家になったのですか。

「もともとはテレビ局のアナウンサーでしたが、1997年に気象予報士の資格を取得したことをきっかけに、天気予報を担当するようになりました。天気には国境がありません。仕事で世界中のデータを調べるうちに、世界で異常気象が増加し、しかも状況が悪化していることに気づきました。そんな時に地球温暖化対策がビジネスになる排出量取引制度があることを知り、それを勉強するために米国のハーバード大学院に留学しました。指導教官から国際NGOで働く道もあるよと教えてもらい、今の仕事に就いたのです」

――WWFは企業と対話する機会も多いと聞きます。日本ではNGOと聞くと警戒する企業もありますが、どんなことに気をつけていますか。

「科学的根拠に基づいて話すこと、そして各社の特徴や事業を取り巻く環境をきちんと理解したうえで話すことです。事業を続けながら、温暖化ガスの排出量を実質ゼロにするのは簡単なことではありません。2030年、2050年の目標達成に向けて、どのように移行していくか。温暖化ガス排出量が多いエネルギーを使っているのであれば、どれを先にやめるか。実行可能な手法はどれか。計算の前提を明らかにしたうえで、省エネルギー計画や移行計画をつくる参考にしてもらえるような説明を心がけています。海外の先行事例やパリ協定等の動きを知りたいという要望もよくいただきます。SBTイニシアチブ、いわゆる科学と整合する温暖化ガス削減目標の立て方に関する質問も多いです」

――WWFはSBT(科学的根拠に基づいた目標)イニシアチブの立ち上げに関与したそうですね。

「はい。WWFと国際NGOの世界資源研究所(WRI)、気候変動対策に関する情報開示システムを運営するCDP、国連グローバル・コンパクトが共同で2014年に設立し、事務局を務めています。SBTは低炭素社会への移行のカギを握ると考えており、今後も関与し続ける予定です」

(毛利靖子)

「デンシバ Spotlight」の記事一覧はこちら

今、転職を検討しているあなたへ / 日経転職版

同世代の年収っていくらぐらい?

日経転職版でチェック

>> 年収チェックはこちらから