
地球温暖化対策を話し合う第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)が、10月末から英グラスゴーで開かれます。多数の非政府組織(NGO)も現地に入り、グローバル企業や金融機関、有力都市と連携して政府間交渉の進展を支える計画です。
NGOは共通の目的や関心を持つ人々が自発的につくった組織です。環境関連では公害問題を契機に1960年代から各国で設立が相次ぎ、92年の地球サミット(国連環境開発会議)で知名度が上がりました。世界自然保護基金(WWF)、レインフォレスト・アクション・ネットワークなどの国際NGOは日本にも拠点があり、名前を聞いたことがあるかもしれません。
国連は国連憲章で、要件を満たすNGOに「協議上の地位」を与えています。政府間協議の場であるCOPで、オブザーバー参加権を持つNGOは2360(2019年)と、20年で6.3倍に増えました。政府とは別の視点を反映した解決策を探るためです。
COP26の期間中は多数のNGOが協議の動向を監視します。利害が激しく対立する場合には、論点整理や多数派工作を手伝うこともあります。国際NGO連合体の気候行動ネットワーク(CAN)は、交渉に後ろ向きな国に対応を促す目的で、「化石賞」という不名誉な賞を贈っています。19年のCOP25では日本が2度も受賞しました。
15年のCOP21では、温暖化対策の新しい国際枠組み「パリ協定」が採択されました。主催国フランスの巧みな采配が注目されましたが、議論が膠着した際に欧州連合(EU)がカリブ海の島国連合やアフリカ諸国と組み、中国やインドと交渉したことが奏功しました。EUと島国連合などが手を組んだ背景には、国際NGOの情報の橋渡しがあったとされています。
経済活動と温暖化ガス削減を両立し脱炭素の進捗状況を比較可能にする方法を探る目的で、国際NGOは多様なプレーヤーと協業を拡大してきました。ソニーや花王が活用するSBT(科学的根拠に基づいた目標)や、RE100(事業に必要な電力を100%再生可能エネルギーで賄う企業連合)の発足には国際NGOが携わりました。
米国のトランプ前大統領がパリ協定からの脱退を宣言した直後にはニューヨーク市や企業、大学の連合が温暖化対策の必要性について声明を出しました。この事務局もNGOです。第一生命保険など世界の機関投資家が脱炭素を後押しするアライアンスの発足にも関与しています。
人権問題の指摘やランキングの発表といった活動を警戒する企業もあります。ただ「課題を早く発見し、世の中に知らせてきた」(高崎経済大学の水口剛学長)のも事実です。政府や企業の思惑が複雑に絡み合う協議の場で、NGOの存在感はますます高まりそうです。