江戸時代のファストフード、ウナギもつまみで

なかなかいい感じになってきたところで、6軒目の「ホルモンぺぺ」へ。「臓物を食べ、背徳感の幸せに浸る」とうたうホルモン系居酒屋だが、ここもまた個性的だ。店づくりは地方にある「秘宝館」(性風俗をテーマにした博物館)をイメージしたそうで、入り口には海外版「PLAYBOY」の扇情的な表紙がずらりと展示されている。
メニューにも「パンティーハイ むとうさん」(パイン+紅茶の無糖チューハイ)、「ブラジャーAカップ」「ブラジャーBカップ」(ブランデー+ジンジャーエール/Aはアルコール薄め、Bは濃いめ)、「裸胸(らむね)サワー」など、言葉選びも狙ったドリンク名が並ぶ。
パンティーやらブラジャーやらのドリンクと一緒に「ミックスホルモン炒め」が到着。牛ホルモンの各部位と鶏レバーやハツを集めた、うま辛炒めだ。いろいろ“おふざけ”がちりばめられているが、ホルモンは臭みがなく、コリコリの食感で美味。チューハイも進む。

いよいよ最後7軒目、ウナギの串焼きが名物の「いづも」へ。今でこそ値段も高騰し、高級食材になったウナギだが、江戸時代は庶民のB級グルメだったそうで、同店では当時の大衆食文化を現代に伝えることをテーマにしている。名物は「鰻(うなぎ)の蒲の穂(がまのほ)焼き」(605円)だ。
身を開き、骨を取って下処理したウナギを特殊技術で合わせて串焼きにしたものだ。形状が、「ガマの穂」という円柱状の植物の穂に似ていることから、命名された。香ばしいウナギのかば焼きを串焼きにしてかぶりつくような料理。なるほど、確かに江戸時代のファストフードだ。店内はこれを肴(さかな)に酒を楽しむ中高年男性客たちで盛り上がっていた。

こうして3時間ほどで浅草横丁を一周ぐるりとハシゴした。居酒屋文化をあらゆるアレンジで堪能できる場所で、酒好きの大人はなかなか楽しめる。にぎやかでつまみも酒もうまいが、なによりスタッフとして働いている若い人たちがどこの店でも笑顔で生き生きしていたのが印象的だった。こんな最新の飲食施設に身を置いたら、ちょっと誇らしい気持ちになるのかもしれない。
いろいろあった東京の飲食業界の、アフターコロナの新章を体感できるような場所だと感じた。2022年の夏の思い出に、足を運んでみては。
(フードライター 浅野陽子)